2007 Fiscal Year Annual Research Report
平安朝物語における〈本文〉生成の機構-定家校訂テキストと非校訂テキストとの比較
Project/Area Number |
19520129
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
仁平 道明 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 教授 (00042440)
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Keywords | 国文学 / 平安朝物語 / 定家 / 『伊勢物語』 / 『源氏物語』 / 定家本 / 校訂 / 本文 |
Research Abstract |
「平安朝物語における〈本文〉生成の機構-定家校訂テキストと非校訂テキストとの比較」と題する本研究は、定家校訂テキストへの遡源とその復元を目的とする定家至上主義を離れ、一見混乱した本文を持つように見える定家校訂以前のテキストの本文と定家校訂テキストとを比較することによって、平安物語の本文読解のためのテキストとして広く利用されている、いわゆる定家本の〈本文〉がどのような本文から、どのような判断によって生成しているのかを明らかにし、可能な場合はその原則を探り、平安物語の本文として採用されることの多い定家校訂テキストの生成の機構を究明し、同時に、その校訂によらない本文のかたちの再評価を試み、定家の判断と校訂を通さない、平安朝物語のかたちへの遡源を試みることを企図するものであった。 そのために、平成19年度は、『伊勢物語』『源氏物語』の本文に関する基礎資料の整備に努め、さらに『伊勢物語』に関する資料の調査、収集を中心に研究を行った。特にその中でも、定家校訂以前のかたちを残す部分があると判断される『伊勢物語』の「古本」あるいは「別本」として位置づけられている諸本のうち、最福寺本及び現天理図書館蔵の七海兵吉旧蔵伝為相筆本について調査、資料の収集を行った。最福寺本の調査は平成20年度も継続して行う予定であるが、現天理図書館蔵の七海兵吉旧蔵伝為相筆本については、近時、下巻のみの時雨亭文庫蔵の建仁二年本系伝本の欠を補うものとして紹介された当該伝本が、仮名遣いから見て定家書写の建仁二年本系の祖本としての位置を持つ「古本」である可能性が考えられることが明らかになった。また諸所に散在する『伊勢物語』断簡の調査によって、定家本と「古本」とを区別する指標も明らかになりつつある。 なお、その成果の一部、特に『伊勢物語』断簡による定家本と非定家本の区分の指標の問題については、平成19年(2007)12月28日に台湾の大学・興国管理学院応用日語系主催の国際学術研究会「2007年日本研究跨学際学術検討会」における招待講演者による「2007年日本研究跨学際座談会」での講演「文学のかたち-写本断簡(古筆切)の意義を中心に」で発表した。
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Research Products
(1 results)