2007 Fiscal Year Annual Research Report
北村季吟の古典研究の文化的・社会的影響力の研究……源氏物語研究の視点から
Project/Area Number |
19520142
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
島内 景二 The University of Electro-Communications, 電気通信学部, 教授 (70170925)
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Keywords | 国文学 / 文学一般 / 文学論 |
Research Abstract |
北村季吟が徳川綱吉の側用人・柳沢吉保と力を合わせて作り上げようとした「理想の文化国家」とはどのようなものだったのか、全国各地の図書館を訪ねて、残された資料から可能な限り復元しようと努力した。その結果、徳川米圀の目指した「文化国家」の樹立と厳しく対立したこと、幕末の国学者たちにも「柳沢吉保・北村季吟」の敷いた文化路線が継承されていたこと、などが新たに判明した。 これらの成果を受け、北村季吟と柳沢吉保をテーマとする単行本の原稿500枚を、一気に書き下ろすことができた。ただし、出版は平成20年度であるので、19年度には刊行できなかったことを残念に思う。出版社も決まり、平成20年3月段階で初校を行っている。この書の刊行は、従来の北村季吟像と柳沢吉保像とを大きく覆し、江戸時代において『源氏物語』『古今和歌集』『伊勢物語』などの古典文学が、生きた政治理論書として活用されたことを明らかにするだろうと期待される。 また、柳沢吉保が北村季吟の指導のもとに作り上げた大名庭園の最高傑作・六義園の研究も、飛躍的に進展した。六義園においてガイドのボランティアをしている方たちや一般市民と共に、『六義園記』を読む講読会を、無料で4回開催し、感謝された。本邦初の『六義園記全注釈』をまとめる材料が、これによって揃った。 平成20年2月から、全国各紙(共同通信社から配信)に10回にわたって連載した「命をつないだ人々……源氏物語千年」は、『源氏物語』の恩人たちを挙げて一般人にわかりやすく解説したものだが、北村季吟の意義を詳しく説明した箇所は、この連載の要となるものだった。この連載も、大きな反響があった。 引き続き、平成20年度も、北村季吟の存在価値を明らかにする研究を続け、一般社会にその研究成果を還元したいと念願している。
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Research Products
(28 results)