2008 Fiscal Year Annual Research Report
北村季吟の古典研究の文化的・社会的影響力の研究……源氏物語研究の視点から
Project/Area Number |
19520142
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
島内 景二 The University of Electro-Communications, 電気通信学部, 教授 (70170925)
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Keywords | 国文学 / 文学一般 / 文学論 |
Research Abstract |
『源氏物語』の精神を江戸時代に蘇らせるために、『湖月抄』という画期的な注釈書を完成させた北村季吟は、時の権力者で元禄文化の推進者であった柳沢吉保と手を組んで、次々に京都の伝統文化を江戸の地に根付かせていった。それが、日本全国に拡大し、江戸時代には空前の文化的成熟が見られるようになった。それがなぜ可能だったのか、そして日本文化をどのように継承し、変革したのか。それを、中世の「古今伝授」と幕末の「国学」とを繋ぎ合わせる役割として、具体的に解明した。 その成果は、『源氏物語ものがたり』(新潮新書)。『光源氏の人間関係』(ウェッジ文庫)、『教科書の文学を読みなおす』(ちくまプリマー新書)という3冊の単行本(単著)によって公刊され、広く社会に向けて発信された。このうち、『源氏物語ものがたり』は、新聞の書評欄で取り上げるほど、好評であった。また私家版で、『「六義園記」注解』を刊行し、北村季吟と柳沢吉保が造営した駒込六義園の理念を解明した。この『「六義園記」注解』は、六義園においてガイド・ボランティアとして活躍している50人近い方々に配布できたので、ガイドする際の参考になると大いに感謝された。 また、平成20年度には間に合わなかったけれども、平成21年6月に刊行予定の単行本『柳沢吉保と江戸の夢』(笠間書院)において、北村季吟と彼の弟子たちが「元禄文化」の成熟に果たした役割を指摘し、顕彰した。 この2年間の研究は、大いに有意義であり、社会にも還元できたと確信する。
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Research Products
(10 results)