2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520161
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
西田 正宏 Osaka Prefecture University, 人間社会学部, 准教授 (00305608)
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Keywords | 近世文学 / 学芸史 / 国学 / 懐徳堂 |
Research Abstract |
本年度は主として『古今通』の伝本の調査、研究を中心に進めた。その成果として、「『古今通』夏部四本対照翻刻」を『上方文化研究センター研究年報』第10号に公表した。『古今通』の伝本は大きく二系統(五井蘭洲の直接の注釈が反映した「自筆本」系統と加藤景範ら門弟により刪捕された「刪補本」系統)に分かれる。その伝本のうち「自筆本」系統として、「大阪府立中之島図書館本」と「ノートルダム女子大学正宗敦夫旧蔵本」を、「刪補本」系統として、「国会図書館本」と「国文学研究資料館蔵初雁文庫本」を、紙幅の関係で「夏部」に限ってではあるが翻刻した。またそれぞれの伝本に関しての簡単な解題を付し、また問題を指摘し、今後の研究への足がかりとした。一部ではあるが、未翻刻資料であり、『古今通』の伝本の様相を窺ううえでも一定の意義を有すると思われる。 また「上方学芸史」の契沖と蘭洲をつなぐ人物として注目される有賀長伯の歌学と実際の歌作についての研究を、『中世近世和歌文芸論集』(日下幸男編、2008年12月、思文閣出版刊)に発表した。 さらにその有賀長伯の直接の師である平問長雅の関わった「堺伝授」について講演し、講演録としてまとめた(「古今伝授をめぐって-堺伝授とは何か?-」、『フォーラム堺学』第十五集、2009年3月、財団法人堺都市政策研究所刊)。 時間的な制約から、『古今通』の伝本調査の一部を残してしまったが、それ以外は、ほぼ計画通りの成果をあげることができた。
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