2007 Fiscal Year Annual Research Report
「周縁」のドイツ語文学-ブコヴィナのユダヤ系文学における多重的周縁性とその表象-
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19520190
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 恭子 Tohoku University, 大学院・国際文化研究科, 准教授 (80241561)
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Keywords | ブコヴィナ / ホロコースト / マイノリティ / ディアスポラ / ルーマニア / ウクライナ / ナショナリズム / ドイツ語 |
Research Abstract |
現在のルーマニアとウクライナ国境付近にあった旧ハプスブルク帝室直轄領ブコヴィナでは,1919年にルーマニア領となった後,優れたユダヤ系ドイツ語詩人が輩出した。しかし,マイノリティ,ショーアー,ディアスポラという苛酷な運命に翻弄されつつ,それゆえにいっそう強く母語ドイツ語への思いを保持し続けた彼らの文学営為は,長い間,ドイツ語文化圏におけるもっとも周縁的位置を強いられてきた。そのため,現在もなお,重要な一次資料が公刊されることなく離散先に散在している。本研究では,第一に,散在している各詩人の,未公刊あるいは公刊されていても内容に疑義のある一次資料を調査し,先行研究で欠落している部分の基礎資料を補う。そのうえで,様々な意味でドイツ語文化圏のもっとも周縁的位置に留まることを強いられた彼らが,その状況とどのように対峙し,独自の文学的表象へと結晶させていったのかを解明する。 平成19年度は,ブカレストのルーマニア国立文学博物館でマルグル=シュペルバーの遺稿や書簡類を,またドイツのデュッセルドルフにあるハインリヒ・ハイネ研究所所蔵のアウスレンダーの遺稿,メモ,書簡類等を調査・収集した。ブカレスト大学ジョルジュ・グツ教授およびアウスレンダーの遺稿を管理している編集者ヘルムート・ブラウン氏と情報交換を行い、また今後の研究についてアドヴァイスを受けた。収集した資料のうち、とりわけ1930年代にマルグル=シュペルバーが提唱したアンソロジー『ぶな』刊行計画とその挫折の経緯について、情報を整理した。
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