2008 Fiscal Year Annual Research Report
「周縁」のドイツ語文学-ブコヴィナのユダヤ系文学における多重的周縁性とその表象-
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19520190
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 恭子 Tohoku University, 大学院・国際文化研究科, 准教授 (80241561)
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Keywords | ブコヴィナ / ホロコースト / マイノリティ / ディアスポラ / ルーマニア / ウクライナ / ナショナリズム / ドイツ語 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、ブコヴィナ出身のユダヤ系ドイツ語詩人たちの遺稿や書簡等を中心とする、多くは未刊行の一次資料を調査・収集した。ドイツ・マールブルクのドイツ文学館でローゼ・アウスレンダーの書簡類等を調査する予定であったが、アウスレンダーの遺稿を管理するヘルムート・ブラウン氏(ローゼ・アウスレンダー協会)から当該資料の提供を受ける等、ドイツやルーマニアの研究者や諸機関の協力を得て、資料収集は、予定以上に順調に進んでいる。そのため、収集した諸資料の分析と整理に集中することができた。 収集した資料のなかでも、アウスレンダーのアメリカ時代の書簡類や、彼女と詩人ペーター・ヨコストラとの往復書簡類、これまであまり情報のなかったモーゼス・ローゼンクランツに関する諸資料、1930年代にブコヴィナでアルフレート・マルグル=シュペルバーを中心に企画され未刊行におわったアンソロジー『ぶな』草稿類等の内容を確認することができたことは大きな進展である。 また、ブコヴィナのユダヤ系ドイツ語文学を理解する前提条件として必要な諸史料を確認した。それにより、この地域のユダヤ系住民がハプスブルク領時代に、ドイツ語ドイツ文化への同化を経て社会統合され、地域社会の主たる担い手になったものの、ブコヴィナがルーマニア領となった後は、政治的にも、社会的にも、また文化的にも、多重的局面で周縁化されていく経緯を確認した。 これらの成果を踏まえ、研究書として出版予定の著書執筆に着手した。来年度、補足資料の収集や調査を重ねる必要があるものの、著書原稿を完成させる目処をつけることができた。
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