2009 Fiscal Year Annual Research Report
「周縁」のドイツ語文学―ブコヴィナのユダヤ系文学における多重的周縁性とその表象―
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19520190
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 恭子 Tohoku University, 大学院・国際文化研究科, 准教授 (80241561)
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Keywords | ブコヴィナ / ホロコースト / マイノリティ / ディアスポラ / ルーマニア / ウクライナ / ナショナリズム / ドイツ語 |
Research Abstract |
一昨年度および昨年度に収集した当該詩人たちの未刊行の遺稿や書簡等を整理・分析し、先行研究で欠落している一次資料を特定するとともに、内容を把握した。先行研究での報告内容に疑義のある資料、例えば両次大戦間期にブコヴィナで企画・編集されたが未刊行に終わったアンソロジー『ぶな』や関連する資料についても、再度、内容を確認した。また、第二次世界大戦後に社会主義国となったルーマニアで刊行された書籍・雑誌・新聞を中心に、古書として流通している一次資料を収集した。そのなかで、今年度は、マルグル=シュペルバーとローゼ・アウスレンダーに関する資料を中心に、第二次世界大戦後の足跡を確認した。 全体の作業を通じ、ドイツ語による文学として優れた作品を生み出したにもかかわらず、「国民文学」として構想されていた「ドイツ文学」という枠組の周縁に位置づけられていたブコヴィナのユダヤ系ドイツ語文学に光を当てることができた。また、今後の研究に必要な基礎資料を日本にも蓄積することができ、ブコヴィナのみならず、ルーマニア・ドイツ語文学研究にも重要な基盤基盤強化を果たした。加えて、ルーマニア独文学会との協力関係も一層強まり、今後の研究にも資するところ大である。 調査結果の一部を学位請求論文「ブコヴィナのユダヤ系ドイツ語文学-『周縁性』の表出としての抒情詩-」としてまとめ、平成21年11月に東北大学大学院国際文化研究科より「博士(国際文化)」の学位を授与された。また、この間にドイツ語圏やルーマニアで発表された研究成果を踏まえ、学位請求論文の一部に加筆したうえで、研究成果報告書として刊行した。今後は、学位請求論文に加筆し、学術書として出版する予定である。
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