2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代同性愛アイデンティティの成立とワイルド裁判の歴史的位相
Project/Area Number |
19520204
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
宮崎 かすみ Yokohama National University, 教育人間科学部, 准教授 (10255200)
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Keywords | オスカー・ワイルド / 同性愛 / 男色 / 変質論 / セクソロジー(性科学) / 自然 / 夏目漱石 |
Research Abstract |
研究2年目の本年度は、内容的にかなり充実した年になった。まず5月に、漱石がワイルドから受けた影響、男色をめぐる近代日本の状況、その文学的表現への昇華などについてロンドンで発表をした。漱石の知名度が低い英語圏であったが、聴衆の反応はとても好意的であり、あまり知られていない明治期日本の性をめぐる状況と英文学と日本文学の巨匠との邂逅について紹介することができ、大変よい機会となった。本報告は、全体の中から選ばれて、学会の成果報告として刊行される書籍にも収められることになった。 さらにワイルド関係で二本、共著の一般書に執筆し、刊行した。うち一冊は宮崎が編者を務めた書籍であるが、英文学研究の視座からさまざまな分野の専門家を束ね、人文学全般の一般書をまとめたことの意義は大きいと自負している。二本とも、英文学関係以外の人たちに多く読まれ、英文学研究の成果の一端を広く世に知らしめることができた。 また、漱石文学を英文学の文脈から読み解いた単著の刊行を準備中である。これは6月ごろに刊行の予定であるが、これも従来の漱石論の常識を覆す画期的なものになると思われる。相当数の読者が見込まれるが、ここにも漱石文学が受けたワイルドの影響関係が詳細に論じられており、これまでのワイルド研究の成果が着実に実を結びつつある。
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Research Products
(5 results)