2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520205
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安村 典子 Kanazawa University, 人間科学系, 教授 (20293376)
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Keywords | プロメテウス / ヘーシオドス / ギリシア神話 / 神統記 / 仕事と日 |
Research Abstract |
本研究はプロメテウス神話を手がかりとして、(1)この神話のもつ意味を明らかにし、この神話を生み出した古代ギリシア人の精神を考察すること、(2)近代においてこの神話の意味が変容していったのはなぜであったのか、その理由を究明し、この神話のもつ今日的な意味を考察すること、以上の2点について研究することを、その目的とした。 本年度は以上のような問題意識に基づいて、主としてヘシオドスの『神統記』に語られているプロメテウスについて考察し、これに関する論文を作成した。なぜプロメテウスが「人間の恩恵者」として理解されるに至ったのか、というプロメテウス神話理解に関する基本的な問題に着目し、この問題がゼウスによるオリュンポス支配と関連していること、更に紀元前8世紀のギリシア世界の歴史(ポリス社会の成立とギリシア民族としての連帯意識)とも関連することを考察した。また、パンドラの壷に関する従来の理解には誤りがあること、「希望」と訳されている「エルピス」は、元来「予見」を意味する語で、プロメテウスという名前の意味と深い連関があることも解明した。これにより、従来のプロメテウス理解に、新たな考察が加えられた。この成果に基づき、京都大学において、プロメテウスとパンドラに関する口頭発表を行った。この論文の英訳も行われた。また、神話を題材にした壁画に関する研究会も開催した。これらの研究活動により、プロメテウス神話の意味並びにそれを生み出したギリシア精神についての理解が深められた。
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