2008 Fiscal Year Annual Research Report
英詩における形式と内容ーラーキンとその関連詩人を中心に
Project/Area Number |
19520212
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮内 弘 Kyoto University, 文学研究科, 教授 (90047407)
|
Keywords | ラーキン / イェイツ / ハーディ / 形式 / 内容 / 韻律 / 押韻 / 文体 |
Research Abstract |
平成21年度はイギリスのハル大学のブリンモア図書館とラーキン資料室の資料を用いて、ラーキンと彼に大きな影響を与えたイェイツ、ハーディの三人の詩人における形式と内容との関係を具体的なテクスト分析に基づいて考察した。三人は詩の技法、形式を重視する詩人であり、とりわけ韻、韻律、音声などに細心の注意を払っている。彼らに共通していることはただ単に伝統的な押韻形式や韻律をそのまま踏襲しているのではなく、詩の内容に適合させて、これまでにない新しい形式を生み出そうと努力している点である。まずイェイツは詩の内容に応じて多岐にわたる押韻形式(例えば同韻とその変型、複雑で均整のとれたパターン、サンドイッチ型、不規則型)を駆使し、様々な文学的効果を上げている。ハーディにおいては詩の意味や気分の変化に応じて、韻律や押韻形式を変えて、形式と内容との一致をはかっている詩が目立つ。また「声」という詩では、男性韻 と女性韻とを交互に用いて、男女の会話を韻によって表現しようとしたり、語尾が弱まる女性韻を巧みに使用することによって、亡霊となって消えゆくこだまの音を効果的に示唆したりしている。 ラーキンにおいては滑稽で互いに不釣り合いな不完全韻や女性韻を用いて、支配的に認められる陰鬱な気分を茶化すような滑稽な気分を醸し出している詩がいくつか見られる。また別の詩においては、詩の内容に適合するような連を跨ぐ押韻形式を開拓し、独特の詩的効果を出していることも見逃してはならないだろう。これらのより詳細な研究結果を『京都大学文学部研究紀要』第48号(2009年3月31日)に発表した。
|
Research Products
(1 results)