2009 Fiscal Year Annual Research Report
英詩における形式と内容-ラーキンとその関連詩人を中心に
Project/Area Number |
19520212
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮内 弘 Kyoto University, 文学研究科, 教授 (90047407)
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Keywords | ラーキン / ハーデイ / 形式 / 重ね合わせ / 埋め込み / シェイクスピア / 手法 / ヒーニー |
Research Abstract |
今年度はラーキンとその関連詩人である、ハーディ、ヒーニー、テッド・ヒューズ、シェイクスピア、スペンサー(ラーキンはルネサンス期の詩人を愛読したと推察される)などの作品における形式と内容との関係を、ラーキンの特質の一つである二重性に帰着する「重ね合わせ」の技法に焦点を合わせて考察した。具体的には「重ね合わせ」を、1)月蝕のように「重ね合わせ」そのものが主題とされたもの、2)掛詞のようなキーワードを介して「重ね合わせ」が仕組まれたもの(スペンサーの鹿狩りを扱ったソネットでは"deer"が"dear"を連想させて、鹿狩りと恋愛が重ねられている)、3)時間的、歴史的に隔たった出来事が重ね合わされたもの(ヒーニーの「罰」では北欧における先史時代の見せしめと現代の北アイルランドのみせしめが重ねられZいる)、4)絵画音楽など他のジャンルの作品が重ねられたもの(ヒューズの「睡蓮を描くこと」という詩ではモネの「睡蓮」が重ねられいる)の4つのパターンに分類して、この手法が個々の詩作品の中でどのように機能し、内容やテーマとどのように関わっているかを論証した。 さらに「重ね合わせ」の一種である「埋め込み」の技法をシェイクスピアやラーキンの作品の中で例示し、埋め込まれた単語が詩のテーマと深く関わり合っていることを示した。例えばラーキンの「刈り取られた草」では、"frail"の中に"ail"(「病む」)が、"builded"の中に"dead"が埋め込まれていて詩のテーマである生のはかなさが強く示唆されている。 これらの研究成果の一部を英詩の手法という一般的な観点からまとめて、『京都大学文学部研究紀要』第49号(2010年3月)に発表した。
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Research Products
(1 results)