2010 Fiscal Year Annual Research Report
英詩における形式と内容-ラーキンとその関連詩人を中心に
Project/Area Number |
19520212
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮内 弘 京都大学, 文学研究科, 教授 (90047407)
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Keywords | ラーキン / ロマンティック詩 / 形式 / 韻律 / 押韻 / 文体 / 脱ロマンティシズム化 / 額縁韻 |
Research Abstract |
本年度は当プロジェクトの最後の年に当たるので、これまでの研究成果を踏まえ、プロジェクトの中心であるラーキンの詩に立ち返って、形式と内容との相関関係を研究してきた。具体的には、ラーキンの恋愛詩や回想詩などのロマンティック詩の範疇に属する詩を取り上げて、詩の内容やテーマを反映した形式が用いられていることを実証した。例えば、ラーキンの代表的な初期の恋愛詩では、過去の事象を凍結して、変化せぬ物に変え、それを額縁に入れて永遠に保存するというモチーフが、額縁型の押韻形式を用いることによって具現化されている。また「1914年」という詩は、第一次世界大戦以前のイギリスの古き良き時代を、主動詞のない一つの名詞文を使用することによって、より効果的に額縁の中に凍結、保存しようとしたものである。同様に「海辺へ」という詩では、海辺の世界が、絵画のように、名詞構文によって凍結、保存されている。この詩では、海の波を想起させる押韻形式が用いられていることも重要である。また「悲しき足取り」の詩の中で用いられている押韻形式は、(aba bba, cdc ddc, efe ffe)であるが、この形式は単位をなす二連ごとに休止があるために、terza rimaのようにスムーズに前に進めない。まさにこの押韻のステップがタイトルの「悲しき足取り」を具現化しているのである。このような内容と形式の一致こそがラーキン詩の顕著な特色なのである。この他、彼のロマンティック詩では、さまざまなレベルにおいて、脱ロマンティシズム化がはかられていることを、具体例を交えながら例証した。 以上の研究成果の一部を『京都大学文学部研究紀要』第50号(2011年3月)に発表した。
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Research Products
(1 results)