2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520217
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永盛 克也 Kyoto University, 文学研究科, 准教授 (10324716)
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Keywords | フランス文学 / 悲劇 / ラシーヌ / セネカ / ストア主義 |
Research Abstract |
17世紀フランスの悲劇作家ラシーヌの文学的素養が16世紀の人文主義の延長線上にあることを前提とした上で、1)特にセネカを媒介として近代ヨーロッパに受け継がれたストア主義思想の影響がラシーヌの劇作品にも伺えること、その一方で、2)ラシーヌの創作態度が伝統を盲目的に踏襲するものではなく、意識的かつ選択的受容というべきものであることを、作家自身の受けた人文主義的教育(修辞学、文献注釈)や作家に間接的な影響を及ぼしたと思われる同時代の著作などに注意を払いながら、悲劇作品や序文の分析を通してテクストのレベルにおいて明らかにすることが本研究の目的である。 計画の1年目である本年度は、16〜17世紀のフランスにおけるストア主義の受容についての研究の一環として、1)セネカの著作(特に『寛容論』)の出版・翻訳状況についての文献資料調査を進め、また、2)悲劇ジャンルとセネカ思想との関連について、特にコルネイユの作品におけるストア主義の影響について研究する予定をたてた。その成果であるが、1)フランス国立図書館の蔵書カタログを参考に主要な版の書誌情報をまとめる作業に着手したが、現段階で網羅的な文献リストを完成することはできておらず、資料調査を引き続き行う必要がある。2)コルネイユの悲劇『シンナ』(1642)がセネカの『寛容論』中の一挿話に想を得ている点に着目し、『寛容論』の受容について以下のような分析を行った(2007年12月の日仏国際シンポジウムで発表)。『ブリタニキュス』(1670)におけるラシーヌの挑戦的意図は『シンナ』(皇帝の恩赦)とは逆の結末(皇帝による暗殺)を設定し、コルネイユの作品世界を反転させて提示することだったと考えられるが、そのために『寛容論』中においてセネカが皇帝ネロに宛てた言葉(死刑執行令への署名を躊躇した際のネロ自身の言葉)を劇中で巧妙に利用し、かつその教訓を無効なものとして提示したのである。
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Research Products
(3 results)