2009 Fiscal Year Annual Research Report
1970年代のバーミンガムにおける「文学の社会学」運動
Project/Area Number |
19520219
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 雄三 Osaka University, 大学院・言語文化研究科, 准教授 (10273715)
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Keywords | ニューレフト / カルチュラル・スタディーズ / モダニズム |
Research Abstract |
前年度までの調査で、「スラント・シンポジアム」の挫折からバーミンガム現代文化センターの構造主義化にいたるまでの過程を明らかにしたが、当該研究最終年度に当たる今年度は、(1)当センターがサッチャーリズムの文化政策にどのように対応したのか、(2)ニューレフト新旧両派の意見の相違について調査を試みた。 (1) の問題を考える上で鍵となるのは、モダニズムの終焉をめぐる論争である。当該研究はこれまで、ニューレフトやバーミンガム現代文化センターの活動は1930年代に端を発するモダニズムを継承していると主張してきた。そのモダニズムがサッチャーリズムの登場により、解体の危機を迎える。なぜなら、サッチャーリズムはポストモダンの文化政策を推進し、脱モダンの高度消費社会に適応したものであったからだ。具体的な成果として活字になるにいたっていないが、ケンブリッジとロンドンの図書館で資料に当たる中で、こうした重要な知見を得ることができたと信じる。 (2) の問題に関しては、1968年に起こる移民入国管理問題とそれに伴う民族的紛争が重要な鍵となる。新派のポール・ギルロイは旧世代のレイモンド・ウィリアムズが島国性から脱却していないことを痛烈に批判したからだ。そこで、本年度は、1950年代から今日にいたるまでの旧英国植民地出身者の文学および批評をおさらいした。具体的には、ギルロイ、サルマン・ルシュディ、タリク・アリなどがニューレフトが提示した問題にどのように答えたかを分析した。その成果は、この分野での研究にたいする書評論文というかたちで、世に問うことができた。
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Research Products
(1 results)