2007 Fiscal Year Annual Research Report
パスカルの自然学関係文書の多角的研究および一次資料からの翻訳
Project/Area Number |
19520247
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
小柳 公代 Aichi Prefectural University, 外国語学部, 教授 (30086235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 裕紀 聖トマス大学, 文学部, 准教授 (50351721)
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Keywords | パスカル / ロベルヴァル / ノエル神父 / 真空実験 / 空気の弾性 / 質量概念 / 原子論 / 信仰と科学 |
Research Abstract |
本申請課題の2つのテーマ「パスカルの自然学関連文書の多角的研究」および「一次資料からの翻訳」をそれぞれ遂行した。前者に関しては、(1)「空気の弾性」について、同時代のロベルヴァルやジャン・ペケなどと対比しつつ、パスカルの独自性がその実証主義的傾向にあること、また(2)「重さ」ついては、その実証主義的傾向にもかかわらず、パスカルの議論が原子論的な質量概念を前提として展開されている、という二点を指摘し、従来のパスカル観を一歩先に進めることができた。また(3)「真空」問題をめぐっては、『真空論序文』と呼ばれている文書について、この表題は写本製作者の与えたものであって、定説とは異なって『真空論』と呼びならわされている断片とは無関係であること、執筆年代は定説よりもずっと早いこと、すなわち、最初の熱い回心直後に真空実験に接して、信仰と科学の両立を迫られた葛藤の時期であることを指摘した。これらの研究成果はすべてフランスでメナール、デコット、ジュスランのような最前線のパスカル研究者の前で、論文(1)ないし口頭(2、3)で発表され、活発な議論の応酬を引き起こした。 「一次資料からの翻訳」については、小柳が2回にわたって渡仏し、とくにノエル神父との論争文書を精査した。その結果、これまで完壁と思われていたメナール版にも若干の不備やミスがあることを発見した。またこの出張の成果をもとに、国内のパスカル研究者2名(永瀬春男氏、山上浩嗣氏)を研究協力者として招いて、当文書の深読みゼミを開催し、「翻訳」に対する注釈を準備することができた。
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Research Products
(8 results)