2008 Fiscal Year Annual Research Report
パスカルの自然学関連文書の多角的研究ならびに一次資料からの翻訳
Project/Area Number |
19520247
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
小柳 公代 Aichi Prefectural University, 外国語学部, 教授 (30086235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 裕紀 聖トマス大学, 人間文化共生学部, 准教授 (50351721)
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Keywords | パスカル / 幾何学の精神 / esprit de justesse / <実験>の歴史 / 質量概念 / 物質量 / principes / 『真空論序文』 |
Research Abstract |
1.今年度2回開催した科研費研究会では、フランス国立図書館の原資料による「パスカルーノエル往復書簡」の厳密読解のほか、知識提供者を招いて多角的研究を進めた。すなわち、流体静力学研究のイギリスでの展開(内田正夫)、パスカルにおける<蓋然性>(永瀬春男)、『パンセ』における賭(山上浩嗣)、反マザラン文書とジャンセニスムの関連(野呂康)などの発表と討議をおこなった。 2.同じく科研費研究会で、小柳公代は『真空論序文』『真空論』のタイトルそのものの架空性を指摘し、『真空論序文(G^1-5文書)』の推定執筆時期変更がパスカルの他文書読解に大きな影響を与えることを強調した。 3.武田裕紀はニュートン力学における質量概念形成の歴史的展開について発表。中世の質料・強制運動・自然運動という<運動>を中心とした思惟枠が、17世紀を経て、物質量(質量)・慣性質量・重力質量という、<質量>中心の思惟枠へ変遷することを示した。武田はまた、『パンセ』の-節の解読を通してパスカルの科学的方法について分析した。具体的には、『パンセ』研究においてこれまでほとんど注目されてこなかったesprit de justesse(的確の精神)という概念を主題に、彼の科学的精神の射程と、科学的論証構造を支えるprincipes(原理)の意味を明らかにした。ここから、パスカルの自然学には、実験重視とともに、否それ以上に、古代以来厳密性のモデルとされてきた<比例>という方法を駆使して適切な規模の論証モデルを構築し、有効な科学的言説を紡ぎだそうとする論理主義的な傾向のあることを指摘できた。 4.小柳は内田とともに2004-05年度科研費で再現記録した真空中の真空実験のDVDを理科系研究会で公開して、討議の中から17世紀の<実験>概念について多くの示唆を得た。
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Research Products
(8 results)