2008 Fiscal Year Annual Research Report
ウェールズとイングランドの国家意識の変遷からみる社会史としてのアーサー王伝説研究
Project/Area Number |
19520257
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
不破 有理 Keio University, 経済学部, 教授 (60156982)
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Keywords | アーサー王伝説 / アーサー王物語 / The Awntyrs off Arthure at the Terne Wathelyne / ウェールズ / Sir Thomas Malory / 受容史 / Thornton MS 91 / 『頭韻詩 アーサーの死』 |
Research Abstract |
平成20年度は、後世のアーサー王伝説の受容に決定的な影響力を持った点でサー・トマス・マロリーの『アーサーの死』(1485年)を研究の基軸と捉える当初の予定通り、マロリーの典拠となった作品と典拠の分析を行った。マロリーの直接の典拠のひとつである『頭韻詩アーサーの死』は唯一「ソーントン写本」に残されている。この写本は中世の騎士道物語を数多く含むことで知られているが、中でも『アーサーのワズリン湖奇譚』(The Awntyrs off Arthure at the Terne Wathelyne)に注目した。ワズリン湖が位置するイングランド北西部という地方性と作品に登場する騎士の出身地がブリテン島の周辺地域(ウェールズやスコットランド、コーンウォール)である点に着目し、両作品の設定、ソーントン写本のコンテキストから想定される読者層を論じ、アーサー王物語の受容の在り方を提示した。本論は第22回国際アーサー王学会にて口頭発表をし、その折にPeter Field教授(ウェールズ大学バンガー校)、Elizabeth Archibald氏(ブリストル大学)、Scott Llyod氏(ウェールズ大学アベリストウィス校)などから好意的な論評をいただいた。本論は『中世主義を越えて』「運命の車輪は止まれるか-ソーントン写本における中英語作品『アーサーのワズリン湖奇譚』再考」としてまとめたが、英文でも今後発表する予定である。 また今後のマロリー学の在り方を示す提言として企画された日本中世英語英文学会のシンポジウムにて、19世紀に出版されたマロリーのテキストの相違からマロリーの受容史を捉える可能性を示した。さらに平成19年度に国際中世学会(米国)にて口頭発表した『頭韻詩アーサーの死』にみられる戦争の概念をアーサー王物語という表象を用いることによってどのような意図が隠されているのかを分析する論考を英文で準備中である。
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Research Products
(4 results)