2007 Fiscal Year Annual Research Report
ラーヴァーター以降の観相学に関するメディア論的研究
Project/Area Number |
19520267
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
神尾 達之 Waseda University, 教育・総合科学学術院, 教授 (60152849)
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Keywords | 観相学 / ラーヴァーター / メディア論 |
Research Abstract |
研究初年度にあたる平成19年度には、二つの目標を立てた。 1)真理の前のヴェールという構図を、観相学のメディア論的な考察に応用するために、皮膚に書かれた文字に関する考察を行い、表層と深層との二項対立を身体表象に定位させて考察する準備を行った。これは、"Schrift und Bild auf der Haut"という論文として『Schriftlichkeit und Bildlichkeit』におさめられた。一般に観相学では、顔が表層として、心が深層として定位される。本論考では、表層を顔に限定せず、顔以外の皮膚全体とした。皮膚も顔も人間の身体の表層に属するが、皮膚はそこに文字を描くことができるテクスト平面であり、意味論的な奥行きをもちうる。それに対して、顔は文字を描くことができないテクスト平面であり、深層が意味論を逸脱した形で表現される部位とみなされる。 2)ラーヴァーター以降の観相学をメディア論的に考察するために、まずはラーヴァーター以降の観相学の大きな見取図を描くことにした。これは、「顔を纏う死の顔面、顔面の死」という論文として、『纏う表層の戯れの彼方に』におさめられた。ここでは観相学史の上に、とくにデスマスクやデスマスク写真集の系列を重ねてみることで、顔と内面の関係を浮き彫りにした。デスマスクが芸術作品として自立するようになったのは、ラーヴァーターの観相学が流行したのとほぼ同時期だった。ラーヴァーターもデスマスクの制作者/鑑賞者もひとしく、観察主体の超越的な位置を前提にし、観察主体を問わないことによって、観察対象を解読したり理想化したりすることができた。
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