2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520279
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
関谷 一彦 関西学院大学, 法学部, 教授 (40288999)
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Keywords | 18世紀フランス文学 / リベルタン文学 / リベルタン版画 / 春画 / エロティシズム / 女哲学者テレーズ |
Research Abstract |
本年度は研究期間の最終年度であるので、これまでの研究のまとめを主に行なった。まず「『哲学者テレーズ』におけるリベルタン版画」のタイトルで論文を発表した。この中では『哲学者テレーズ』のさまざまな版に見られる版画を取り上げて比較検討した。リベルタン版画は日本の春画同様に1990年頃までは猥褻であるとしてあまり評価されてこなかったが、現在ではその価値が見直されつつある。フランスではこの領域の研究はまだ未開拓で、あまり多くの研究があるとは言えない。そこでリベルタン小説としてもっとも重要な作品である『哲学者テレーズ』に含まれる挿絵を取り上げて、主にフランス国立図書館所蔵のEnfer(発禁本)402、404、406・407を比較検討した。挿絵の質、芸術的価値、『哲学者テレーズ』における挿絵の特徴、またその役割などを分析した。 さらに、『女哲学者テレーズ』としてこの作品の翻訳を人文書院から出版した。この作品は先にも述べたようにリベルタン小説の中核であり、18世紀フランスでもよく読まれた。そのためまずは作品の全容を紹介して、リベルタン文学を読者に味わってもらいたいというのが翻訳の目的である。とくにリベルタン小説をポルノ小説とみなす視点に問題提起をしたかった。またこの翻訳の後ろに「訳者解説」として約60頁の解説を付した。とりわけリベルタン文学およびリベルタン版画が、18世紀フランス社会で果たした役割について、当時の社会に与えたインパクトの重要性から単なる猥褻文学ではなくフランス革命にいたる社会批判の役割を担っていたのではないかと問題提起をした。この翻訳は猥褻なテクストや挿絵を含んでいるにもかかわらず、「日本図書館協会」の選定図書に選ばれた。
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