2007 Fiscal Year Annual Research Report
湖北省の無形文化財「漢川釜書」における聖諭宵講の継承発展に関する総括的調査研究
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19520306
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
阿部 泰記 Yamaguchi University, 大学院・東アジア研究科, 教授 (40091227)
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Keywords | 漢川善書 / 聖諭宣講 / 民衆教化 / 無形文化財 / 伝統芸能 / 民間文芸 / 西南官話 / 湖北 |
Research Abstract |
1.「漢川善書」の歴史と文体分析一漢川善書は清代の民衆教化政策の一環として行われた「聖諭宣講」が形骸化していく中で民衆への浸透を図るため、民衆文芸化したものである。その文体は歌唱部分「宣」と講説部分「講」とから成り、四川・湖北の方言である「西南官話」を用いている。この文体の由来を検証するため、国内外の図書館において聖諭宣講や民間文芸の資料を収集するうち、この文芸がもともと聖諭宣講における果報説話の講説と勧善歌の歌唱の結合に始まるものであることを解読した。また聖諭宣講の政策が宝巻、民謡などの分野にも影響を及ぼしていることを検証した。現在『聖諭宣講の演芸化に関する研究』(仮題)として原稿を執筆中である。 2.「漢川善書」の上演記録一「漢川善書」の上演は経常的に演芸館で上演するとともに、毎年旧正月に農村で行われている。これは善書の上演がその地域の無病息災を保証するという意味からである。2002年以来継続して記録してきたが、本年度は正月に漢川市郊外の黄家村で取材した。これによって上演グループが徐忠徳氏ら5名に固定していることを確認した。郷村によって上演に特色があり、黄家村ではまた黄家の家系譜をもとに脚本を作り、村民に歴史を教えて一村の団結を唱っていた。 3.包公伝説との関わりの分析一包公伝説は天人感応説を基本として神話的な色彩が強い、それゆえ勧善懲悪を主旨とする善書にも多数取材されて作品化されている。こうした包公伝説と善書の関係を明らかにしていくために、台湾国立中興大学が主催した「文学与神話国際学術研討会」(2008年3月)において「民間包公戯裡展開的神話世界」と題して発表した。
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