2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520363
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
高橋 豊美 Surugadai University, 文化情報学部, 准教授 (60265444)
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Keywords | 音韻論 / 音節 / 局所性 / 指向性 / 依存 / 重複 / 最適性 / ミクロネシア言語 |
Research Abstract |
1成果 (1)統率音韻論では局所性、指向性の原理に基づいて、すべての音節構成素が最大でも二項分岐であるという制約性の高い普遍的音節構造を主張している。しかし、本研究は、この構造が唯一経路の原理(Unique Path)すなわち主要部から補部に至る依存経路は音韻表示上で分岐しないという制約のみで導けることを論証した。また、この原理によって統率音韻論が主張する最小条件の原理も不要になることも示し、唯一経路が高い説明的妥当性を有していると主張した。 (2)ミクロネシア言語に広く観察される語頭音重複は、音声信号上では単音の重複として記述される。しかし、統率音韻論が主張する空範疇(数字の0のように存在しないことがアイデンティティとなる要素)及び適性統率(空範疇は条件が満たされると音声信号上に現れないという考え方)の概念と、最適性音韻論が主張する普遍的制約の序列化の概念(すべての言語に共通する複数の制約が言語ごとに序列化され、これにより音韻現象が生じるとする考え)とを組み合わせると、音韻表示では最小鋳型充足の制約を受けた音節の重複として分析できることを示した。 2意義 (1)はメタ理論的、(2)は実証的なアプローチをとっているが、両研究が共通に示すのは、非対称的関係性(依存)を基盤とする音節構造理論が高い説明的妥当性を有することである。非線形表示の概念を捉え直し、線形表示を基盤とする複数の原理で説明されてきた特徴を単一の原理から導くというアプローチは今後、上位の韻律構造の研究、分節音内の依存構造の研究にも応用できるものと考える。 また、最大鋳型充足の制約があることは韻律音韻論で示されてきたが、最適性理論による「序列の組み替え」で導かれる最小鋳型充足の制約が存在することを実証した点、さらに、最適性理論と統率音韻論との融合が高い説明的妥当性を有する枠組みを産み出す可能性があることを示した点も重要であると考える。
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Research Products
(3 results)