2007 Fiscal Year Annual Research Report
条件表現の推移から見る明治・大生期日本語の動態に関する研究
Project/Area Number |
19520392
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
矢島 正浩 Aichi University of Education, 教育学部, 准教授 (00230201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
揚妻 祐樹 藤女子大学, 文学部, 教授 (40231857)
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Keywords | 条件表現 / 近代大阪語 / 近代東京語 / 評価的複合形式 / 打消条件句 / 言文一致体 |
Research Abstract |
本研究は条件表現の調査を通じて,近代日本語の動態について明らかにすることを目的とする。特に近代語以降の条件表現史は,これまで標準語としての文字資料や内省を対象にした研究が多く行われてきた。その現状を省み,本研究は近代語を,上方、大阪語と江戸、東京語を比較すること,また文字資料のみならず音声文字化資料を用いることによって検討するものである。平成19年度は,以下のとおり,江戸、東京語に関しては資料の入手とデータ整理等の基礎作業を行い,上方、大阪語については2と3の論点から,江戸、東京語については4の観点から検討した。 1.明治末〜昭和初期東京語の録音資料を入手,その文字化作業を実施するとともにデータの整理を行った。 2.近世上方語、近現代大阪語を対象として,評価的複合形式〜タライイ,〜タライカン・アカンを取り上げ,そこで用いられる仮定表現形式の移り変わりを検討した。同表現域では,働きかけ性を帯びる表現か否かによって取る形式に相違があること,働きかけ性の有無によって文法化の度合いに相違が認められること,それによって条件表現史全体の推移との関係が整合的に説明できることなどを明らかにした。 3.近世上方語、大阪語を対象とした場合,打消の条件句は,他の動詞類が構成する条件句に比べて旧来の仮定形を取りやすい傾向がある。同様のことが形容詞など状態を表す語による条件句でも認められることを明らかにした上で,打消の条件句も含めたそれら「様相」に関わる表現類の仮定表現がなぜ新しいタラ・ナラなどによる表現の発達が遅れるのかについて検討した。 4.尾崎紅葉の『多情多恨』を資料として条件表現やノデアルの使用などを検討することによって,紅葉の文体が後の言文一致体と比較して,「語り手の現前性」を暗示する性質を持つ点や対読者への待遇性を表現する点で異質な面を含むことを明らかにした。
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Research Products
(3 results)