Research Abstract |
2007年度における文献研究,教科書分析,および韓国の大学校での日本語韻律指導実践における授業担当教師とのメールを通じての議論をもとに,『1日10分の発音練習』(くろしお出版)の教師用指導書のひながたを執筆した。このときの学習者の発音の誤用分析,および学習者の内省報告の量的・質的分析結果に関しては,2件の学会発表を行い,『日本語教育の過去・現在・未来』(水谷修監修,凡人社),および『広島大学日本語教育研究』19号に論文として発表した。 また,2008年6月〜9月に,広島大学の留学生6名に,1回30分×週2回程度(計17回)の韻律指導を行った結果についてもまとめた。ここでは,本研究者がそれぞれの課・節の教師用指導書を書き,日本語講師の経験のある博士課程の大学院生1名に,教師として指導を行わせ,指導書に関してフィードバックを受けた。本研究者による実践ではなく,他の教師による指導の観察というかたちをとったのは,教材作成者ではない,教材使用者である教師が指導時に何を考え,行動したかを明らかにするためである。韻律指導に特化した音声学的知識の,何がどこまで必要とされるのかを再検討する意図もあった。授業の様子はビデオ録画し,教師には,毎回の授業後,準備段階や指導中の内省をメールで報告させた。学習者や観察者にも,授業時の内省等をメールで報告させた。この,学習者,教師,観察者の三者の内省報告を分析し,「モデル音を与えることの是非」「評価の食い違いと評価箇所のズレの問題」「誤用指摘方法の使い分け」「教師の正誤判断や解答を与えるタイミング」「学習者の発音に好する教師評価」という5つの観点から考察したものを,『日本語教育』142号に論文として発表した。
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