2009 Fiscal Year Annual Research Report
15~19世紀、列島北方地域とアムール川最下流域の諸民族との交流に関する研究
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19520545
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
榎森 進 Tohoku Gakuin University, 文学部, 教授 (10145972)
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Keywords | 列島北方地域 / アムール川 / サンタン人 / 諸民族 / 文化交流 |
Research Abstract |
本研究の目的は、平成14年度~平成17年度日本学術振興会科学研究費補助金による共同研究基盤研究(B)「13~19世紀における列島北方地域史とアムール川流域文化の相互関連に関する研究」(研究代表者:東北学院大学教授榎森進)の研究成果を踏まえ、15~16世紀の問題については、アムール川最下流域の現ニヴヒ民族を初めとする諸民族やサハリンのアイヌ民族と明朝の関係のあり方の特徴を中国側の記録に依拠して解明し、17~19世紀における問題については、中国側及びロシア側の関係記録と日本側の関係記録、特に「箱館奉行所文書」を中心とする幕府文書類に「サンタン人」と記されている人々の居住地名・人名を検討し、それを基にして主として現在アムール川最下流域に居住しているニヴフ民族のインフォーマントから聴き取り調査を行うことによって、「サンタン人」の実体を解明すると同時に、アムール川最下流域の諸民族とサハリンのアイヌ民族を中心とする諸民族との「ヒト」・「モノ」・「情報」の交流の性格を再検討し、その研究成果を基にして、15~19世紀における「列島北方地域」とアムール川最下流域の諸民族との「交流」の歴史的意味を解明するところにある。そのため、平成21年度は、前年度に実施した「箱館奉行所文書」を中心とする幕府文書の調査及びアムール川最下流域のニコラエフスク・ナ・アムーレ市の国立文書館で撮影した1930年代~1990年に至る時期の北方民族関係のロシア語文書とニヴヒ民族のインフォーマントからの聴き取り調査内容の整理・分析を行い、その結果、次のことを解明することが出来た。 1.1891年頃の大陸側のニヴフ民族の居住村落は55存在し、当該村落に居住していたニヴフ民族の氏族名を把握することが出来たこと。また、その村落は現ウリチ地区にまで存在していたこと。このことは、日本の近世に「サンタン人」と称された人々が単にウリチ民族だけでなく、ニヴフ民族も含まれていたことを示唆していること。2.聴き取り調査による限りでは、その多くがアムール川流域よりは、アムール川河口部南北の海岸又は島に居住していた人々が多く、且つ居住地の移動がかなり多く見られたが、その移動の大きな要因がソ連時代のコルホーズの設置のあり方にあったこと。3.ニヴフ民族とサハリンのアイヌ民族との婚姻・交流関係が予想していた以上に多く存在していたこと。このこともまた、「サンタン人」の中にニヴフ民族が含まれていたことを暗示していること等である。
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Research Products
(4 results)