2008 Fiscal Year Annual Research Report
幕末期における畿内・近国社会-戦争と災害の視点から-
Project/Area Number |
19520568
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩城 卓二 Kyoto University, 人文科学研究所, 准教授 (20232639)
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Keywords | 日本史 / 幕末期 / 戦争 / 災害 / 尼崎藩 / 情報 |
Research Abstract |
本研究は戦争と災害という視点から、畿内・近国社会からみた幕末期論の構築を目的とするもので、本年度はそれに関わる史料の収集と基礎データの作成を行った。具体的には(1)昨年度収集した早稲田大学図書館所蔵「服部文庫」の細目録作成、(2)尼崎藩大庄屋岡本家文書・武庫川右岸域村々文書の武庫川水害に関わる史料の写真撮影・紙焼き、(3)幕末期の水害・戦争に関する瓦版史料の所在確認、(4)全国の地域有力層文書に残されている幕末期、畿内・近国に関わる風聞情報文書の収集である。(1)については簿冊の細目録を作成することで尼崎藩の政治動向や情報収集の過程・方法が知られるようになった。(2)では武庫川堤防の決壊に対する村々の対応と、その修復による労働力需要の高まりが農業労働の確保に深刻な影響を与えているらしいことが確認できた。(3)は(1)との関わりで、藩とは異なる民間社会の情報伝播、(4)も同様の視点に関わるもので、他地域の人びとが畿内・近国で起こる政治・災害・事件の情報をどのように収集していたのかを検討することで、他地域から幕末期畿内・近国社会を照射することができた。昨年度は主に領主層の視点から研究を進めたが、今年度はそれをふまえ地域社会の側から幕末期の畿内・近国社会を照射するための史料収集とデータ作成を行い、一定の成果を上げることができた。次年度は、文久将軍上洛、禁門の変、長州戦争、武庫川水害の4つについて、領主層と地域社会の対応に迫り、研究のまとめを行いたい。
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