2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520574
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
今津 勝紀 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (20269971)
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Keywords | 災害 / 飢饉 / 疫病 / GIS / 人口 |
Research Abstract |
本研究は、地理情報システムや時系列シミュレーションなどの情報科学の手法を利用して、古代の疫病や飢饉の実態を復元し、こうした災害が当時の社会にどのように作用したか、奈良時代初期から平安時代初期にかけての人口の推移を明らかにすることを目的とし、古代の疫病と飢饉の災害規模、奈良時代初めから平安時代初めまでの人口推移を時系列にしたがった形で示すことを課題とする。本研究では、(1)人口変動をシミュレートするために、定点となりうるセンサスデータを取得し(大宝二年御野国戸籍)、(2)『続日本紀』をはじめとした史書より、疫病や飢饉、賑給の記事を網羅し、被害人数・発生月・発生年・発生国・種別などの属性情報とするデータベースを作成した。そして、(3)飢饉の被害をGISで処理するために、旧国単位の日本地図をシェープファイルの形式で作成した。 本年度は、(A)貞観年間の隠岐国の疫病と飢饉などから被害率を算出した。中近世の飢饉事例についても検討し、幾通りかのパターンを作成した。また(B)人口変動プログラムを作成し、(A)より求めた災害変数を組み込んだシミュレーションを実施したが、全国規模でのシミュレートはかなわなかった。(C)旧国を単位とした日本地図については、これまでに引き続き、北部九州・関東地方の古地形の復元を行なった。(D)近世に飢饉被害に見舞われた津軽地方の人口分布について補足的な調査を行なった。(E)以上について、成果報告書を作成し、旧国日本地図、今津勝紀「今津勝紀「古代の災害と地域社会-飢饉と疫病-」(大阪歴史科学協議会『歴史科学』196、2009.3)、籔井真沙美「八世紀における賑給の意義と役割」および今津勝紀「『うつほ物語』俊蔭をめぐって」を収録した。 本研究を通じて、被害を織り込んだ、奈良時代初期から平安時代初めまでの人口変動については、全国を対象とした精度の高いシミュレートは不可能であるが、数郡から一国程度の規模の場合、大規模な飢饉と疫病で三割から五割の被害が想定できることが判明した。
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Research Products
(5 results)