2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520597
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
片岡 一忠 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (50092515)
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Keywords | 「呉越王寶」 / 印牌 / 朱記 / 奉使印 / 「建炎」を冠した印 / 会子印 / 印款 / 「偽行印信」 |
Research Abstract |
本研究は、10世紀初めから13世紀後半までの五代と宋・遼・金の王朝の官印制度を中国官印制度史上に位置付けようとするものである。本年度の課題は史料収集と整理に重点をおくものであったが、整理のついた五代・宋時代について研究の成果を発表することができた。以下、その要点を列挙する。 1.「研究実施計画」の(1)の文献の調査と収集は、最近の経済発展に伴う活発な建設事業によって出土物が多く、またいち早く雑誌・報告書として公開されたこと、それらを収集した京都大学を初めとする研究機関での文献調査によって、最新の情報を入手できた。そのため、(2)の東京国立博物館収蔵印譜の調査は取りやめた。その一方で、2007年3月の台北・故宮博物院での展示品と関係図録によって、これまで未見の官印を確認できた。 2.「五代・宋時代の官印制度」の成果として、つぎの諸点があげられる。 (1)五代の官印は10個が確認できるだけであるが、五代を通じてこれまでと同様、「伝国璽」をはじめ、官印が通用し、その権威を容認されたことが確認できた。特に官印の偽造や不正使用を意味する「偽行印信」が犯罪として重視され、恩赦の対象から外されたことは、皇帝権の冒とく行為として、厳しく罰せられていたことを知らせるものである。 (2)五代政権の臣従していたと考えられた「十国」の態度は複雑で、呉越国にあっては、後唐から「呉越王印」を賜りながら、国内では「呉越王寳」をつくり使用していたと考えられ、「面従腹背」といえるものであった。 (3)宋朝は正方形の印と長方形の記(朱記)の二種類の官印をつくり、中央から地方末端の機構に至るまで機能した。宋朝にあってつぎの諸点がはじめて設けられた。(1)品級による大きさの違い、(2)印背の鋳造部署、鋳造年月、鉦頭部の「上」字といった印款、(3)「印牌制度」、これらによって官印の管理と使用がより厳格に行われるシステムがつくられた。
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Research Products
(1 results)