2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520597
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
片岡 一忠 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (50092515)
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Keywords | 印款 / 印牌 / 会子印 / 「偽行印信」 / 九畳篆 / 「呉越王寳」 / 朱記 / 民族文印 |
Research Abstract |
本研究は、10世紀初めから13世紀後半までの五代と宋・遼・金王朝の官印制度を中国官印制度史の中に位置づけようとするものである。その成果の要点はつぎのとおりである。 1.五代の官印は10個を確認できるだけであるが、混乱に時代であっても皇帝位継承の象徴である「伝国璽」をはじめ、王朝発給に官印が通用し、その偽造や不正使用を厳罰に処する刑罰規定から、官印の権威を維持する措置が堅持された。「呉越国王寳」の存在は個々の王朝が自己の政治的自立性を誇示したことを証明する実物といえる。 2.宋朝の官印は皇帝権を確立し、貴族に代えて科挙官僚に支えられた皇帝政治を円滑にする道具として機能したことが、その整備された制度から確認された。ここに清朝に至る官印制度の基本となる陽文朱印型官印制度が完成した。その特徴は、(1)印文の書体が九畳象という、5cm以上の印面の空白を埋める重層的に刻された。(2)正方形の官衙印と長方形の官職印が用途に応じて使い分けられた。(3)印背に鋳造部署名や鋳造年月を刻する「印款」が見られるようになった。(4)鈕式は「にぎる」に便利なように長くなり、その頭部に印文の上下を示す「上」字が刻された。 3.北方民族の政権である遼(契丹族)、金(女真族)、そして西夏(タングート)も中国支配の道具として官印を用いた。その特徴は民族文字を印文に刻した官印で、その形式はのちの元(モンゴル族)のパクパ文印、清(満洲族)の満漢合壁印に影響を与えた。
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Research Products
(1 results)