2009 Fiscal Year Annual Research Report
宗教弾圧がネップ体制成立に及ぼした影響に関する研究
Project/Area Number |
19520624
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
梶川 伸一 Kanazawa University, 歴史言語文化学系, 教授 (50194733)
|
Keywords | レーニン / 教会弾圧 / シュヤ事件 / トロツキー / チーホン |
Research Abstract |
22年2月以後、ボリシェヴィキ権力と教会との対立は決定的となった。飢餓民援助がボリシェヴィキにとって絶好の機会を与えたというのは、単に飢餓民救済基金が教会資産を没収する際の表向きの理由となっただけではない。飢饉が頂点を迎えようとする22年春になると、農村一帯は「赤色テロル」に蹂躙されただけでなく、飢饉によっても民衆は心身ともにまったく疲労困憊し、彼らには教会弾圧に抵抗する力は残されていなかった。まさにレーニンとトロツキーは絶好のタイミングをはかったといえる。これを決定づけたのが、3月15日にシュヤ市で行われた教会資産の登録に反対して民衆が抵抗した事件である。この事件そのものはその日のうちに鎮定され、間もなく作業が再開されると現地から報告されていたにもかかわらず、レーニンは3月19日づけ政治局員への秘密書簡で、シュヤ事件は反革命運動の陰謀の発覚であり、それを容赦なく弾圧せよとの指示を与え、彼自身が欠席する翌日の政治局会議での決議の方針を与えた。この書簡はこれまで政治局員の中にあった教会弾圧への待機的気分を一掃させ、それ以後各地で強力な軍事力とチェー・カーを動員しての教会財産の没収が行われるようになった。この書簡の重要なことは、それだけではなく、これまで反教会政策の強硬派であったトロツキーを表舞台に出ないようにさせ、カリーニンを表舞台に立たすよう指示を与えたことである。一般大衆からだけでなく、一般党員からも秘匿させるような密室政治がこの事件を通して生み出されるようになった。それ以後、教会弾圧とチーホンを筆頭として聖職者の銃殺にいたる迫害は、これまでのように党中央委で決定されるのではなく、特別委によってこの会議の方針さえも先決されるようになった。こうして、レーニンの晩年にチェー・カーを中心とした弾圧密室政治体制が成立したのである。
|
Research Products
(1 results)
-
[Journal Article]2009
Author(s)
梶川伸一
-
Journal Title
Голод и болъшевистская властъ. -В Кн. 《Государственная властъ и крестъянство》(Министерство образования и науки РФ)
Pages: 117-122