2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520629
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
古谷 大輔 Osaka University, 世界言語研究センター, 准教授 (30335400)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中本 香 大阪大学, 世界言語研究センター, 准教授 (30324875)
|
Keywords | 近世ヨーロッパ / 複合国家 / スウェーデン / スペイン / 帰属概念 / 国家形成 / 女性史 / 戦争 |
Research Abstract |
国際戦争の影響下に生じた政治・社会変動に着目しながら近世ヨーロッパ周縁部における複合的国家編成の変化を分析する本研究は、本年度18世紀の「帝国」再編を担った社会的エリートの言説分析を中心に進められた。 バルト海帝国と通称されたスウェーデンについては、啓蒙期に「帝国」再編を担った政治経済学者の言説分析を通じて、福音主義やゴート主義など、スウェーデン国家の正統性をめぐる伝統的言説が援用されつつ、新たな資源動員を広範囲に可能とするナショーン概念の拡張が見られたことを明らかにした。また第26回北欧歴史家会議での前近代のアイデンティティを検討する研究者グループとの交流から、国家再編に求められた正統性が古代性に依拠して主張された知見を得て、啓蒙期の歴史叙述のなかからそれを確認した。今後は啓蒙期ヨーロッパの世界観に影響を与えたリンネの言説などにも分析対象を広げ、政治・経済政策の根拠として伝統的言説が援用された結果として生み出された新たなスウェーデン観の分析を進める。 スペイン帝国については、継承戦争および七年戦争後の諸国家間の勢力変化に対する危機感を背景として議論された「帝国」再編のための啓蒙改革について、国内改革の具体的な担い手となった知識人団体の活動に注目し、首都マドリードの経済協会ならびにそれに属する女性団体の議事録等分析を通じて、地方の社会団体が経済活動の合理化・近代化の主体としてのみならず、女性の地位向上や教育問題といった社会改革の中心として機能した実態を明らかにした。啓蒙期におけるスペイン国家の再編は植民地防衛と本国スペインの強大化という二重の目標を持ったものとしてこれら両面から考察されるべきものであるため、今後はマドリード市立歴史図書館で行われた史料調査の結果を踏まえ、女性団体の積極的活動に関する分析と並行して啓蒙思想が植民地政策に及ぼした影響についての分析を進める。
|
Research Products
(7 results)