2007 Fiscal Year Annual Research Report
GISを活用した河川流における災害の民俗の統合的分析-吉野川を事例として
Project/Area Number |
19520702
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
高橋 晋一 The University of Tokushima, 総合科学部, 教授 (10236284)
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Keywords | 民俗 / 河川 / 災害 / GIS |
Research Abstract |
平成19年度は、徳島県等の河川流域における災害の民俗に関する主要文献を収集精読、我が国の河川流域における災害の特色と、災害に対処する民俗の特徴を把握した上で、1)吉野川流域の自然環境に関わるデジタルデータ(流域の土壌や植生、地域別の年間降水量、地点別河川流量、コンターデータ、土地利用、過去の洪水による浸水域、堤防の決壊地点などに関する資料)、2)吉野川流域の過去に洪水の被害に関わる空間データ(過去の洪水記録資料より作成)、3)築堤、防水竹林、高石垣造りの家、水神、不動尊、地蔵尊など「災害の民俗」に関わるデータを、文献調査および現地調査によって収集・整理し、吉野川流域のGISベースマップ上にデジタルデータとしてアップしていく作業を行った。平成19年度は、とくに吉野川中・下流域を中心として調査および作図作業を実施したが、全体を通して、過去に水害に襲われる頻度の高かった地域ほど「災害の民俗」が重層的な姿をもって立ち現れていること(板野郡藍住町、名西郡石井町など)、その対処のあり方として、技術的対応(築堤、高石垣造りの家、防水竹林など)、心意的対応(水神信仰、不動信仰、地蔵信仰など)の両面が併存していることが明らかになった。このような流域における災害の民俗の諸相を空間(地図)上に位置づけていく作業は、人々の生活の中から生み出された治水対策とハザードマップを再構成する作業という点でも大きな意味を持つものと考えられる。また、GISマップを援用して民俗事象の分析を行うという本研究の手法は、民俗の空間情報分析に新たなアプローチをもたらすという意義があるものと思われる。
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