2008 Fiscal Year Annual Research Report
新疆モンゴル地域における自然認識の動態に関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
19520703
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
シンジルト 熊本大学, 文学部, 准教授 (00361858)
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Keywords | 自然認識 / 文化人類学 / 環境政策 / 新疆モンゴル地域 / 民族自治権 / 民族集団間関係 / 世代 / 儀礼 |
Research Abstract |
本研究の目的は、文化人類学的な方法論で新疆ウイグル自治区に位置するモンゴル族諸社会の自然認識の動態を解明することである。初年度の調査経験を踏まえ2008年度からの本格調査は、民族自治権の有無によって地域間の自然認識がどのように異なるかを考察することに焦点を絞った。その一環として、2008年夏休期間中、新疆ホボクサイル=モンゴル族自治県〔以下、自治県〕とその周辺地域で調査を実施した。調査を通じて、まず、[1]1950年以降、民族自治制度の導入などに伴う社会ネットワークの変化、民族や宗教集団間の関係・開発政策の変遷が、如何に地域の政治経済文化的状況に影響を与えてきたかを確認することができた。また、[2]信仰(宗教職能者や寺院の社会的地位の変化、チベット地域の寺院とのネットワーク)・慣習(ツェタル〔特定の個としての家畜や植物の魂や命を自由にすることを指すチベット語。モンゴル語では、セテル〕を行う理由に関する解釈)・禁忌(種類や違反への処罰)・教育(学校教育の普及状況及びそれに伴う住民の意識変化)・生業(草原と農地利用の方法の変化、とりわけ油田開発によるカラマイ市の誕生やそれに伴う内地からの移民の流入が、自治県の社会経済にもたらした諸影響)など自然認識に関わる諸要素を総合的に把握することができた。さらに、[3]長い間社会文化的な側面で周辺カザフ族の影響をうけてきた自治県は1980年代以降、内モンゴル自治区からの影響が強くみられてきたこと、自治県内のいくつかのローカルな慣習がしばしば「モンゴル文化」の一部ないし「新疆モンゴル文化」の核心として位置づけられ、地方行政府からの保護そして支持を受けてきたことも調査を通じて観察することができた。そこで、こうした自治県のケースと比較して、いわば民族自治権をもたないイリ地域のモンゴル族社会におけるツェタルなど慣習が、どのように位置づけられているかを考察することを、次年度の調査研究課題としたい。
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Research Products
(3 results)