2008 Fiscal Year Annual Research Report
フランス・アルザス地方における徴兵制廃止に伴う若者文化の変容研究
Project/Area Number |
19520713
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
蔵持 不三也 Waseda University, 人間科学学術院, 教授 (40195540)
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Keywords | 文化人類学・民俗学 / 地域研究 / 人文地理学 / 社会学 |
Research Abstract |
2007年9月の予備調査を受けて、2008年6月にアルザス地方スルツバック=レ=バン村の実地調査を行った。まず、前年の調査では会えなかった村長から、次いでその他の住民たちから人口過疎に悩む村の現況を聞き取り、さらに年伝統的な「聖ヨハネの日(6月24日)の火祭り」を担う18歳〜16歳の若者たち15名からも、日常的な活動や生活上のさまざまな不満などについての聞き取りを行った。これら一連の聞き取り調査から、2001年の徴兵制廃止と呼応するかのように、村の若者文化(スポーツ・クラブやダンス・パーティなど)がドラスティックに衰退・消滅していることがわかった。 さらに、火祭り自体も1997年の調査時におけるそれとは比較にならないほど縮小し、かつては徴兵対象者(コンスクリ)だけが行っていた火塚の燃料集めから構築までの準備作業も、今では大人たちがやるようになっており、コンスクリたちは単にそれを見て歓声を上げるだけとなっている。もはやこの祝祭に、国家的な通過儀礼(徴兵)と村落社会での通過儀礼(火祭りの主体的遂行)という、二重の通過儀礼としての意味を見出すことができなくなっている。加えて、祭りで歌われていたアルザス語による「コンスクリ・ソング」も聞かれなくなった。彼ら若者たちがすでにアルザス語を解さなくなっているためである。これらの調査によって、同村における若者文化のアイデンティティや表象が、徴兵制の廃止を挟んで、ここ10年のうちに大きく変容したことが確認できた。 はたして、こうした変容がアルザス地方全体のものなのか、同村だけの現象なのかは不明だが、この問題は引き続き調査を続けることで解明したい。
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Research Products
(1 results)