2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本中世の裁判における判決および判決理由に関する法制史的実証研究
Project/Area Number |
19530014
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
西村 安博 Doshisha University, 法学部, 教授 (90274414)
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Keywords | 鎌倉幕府 / 裁許状 / 下知 / 和与 / 問状 / 召文 / 裁判規範 / 所務沙汰 |
Research Abstract |
本研究に着手した平成19年度以降、研究代表者は鎌倉幕府の発給した判決文書(裁許状)を主な対象史料として、その整理・検討を進めて来た。具体的にいえば、関東・六波羅・鎮西の各裁判所の作成した同文書に関して、判決内容および判決論理を抽出していくという作業を進めて来ている。昨年度までに、関東裁許状全体に関する予備的検討を終えたが、今年度においては、六波羅・鎮西に関する予備的検討をほぼ終えた。 本年度においては、関東・六波羅・鎮西のすべての裁許状を対象として、その重要な判決論理である「召文違背之咎」に焦点を絞り、該当史料の仔細な検討を行った。裁判所が訴人を通じて論人宛てに発給した召喚状には、問状あるいは召文という形態の文書があったが、それらの機能上の区別については、これまで曖昧な理解に止まっていた。この点に関しては該当する裁許状に基づき、関連史料を精査する一方、近時の岩元修一博士による研究成果を踏まえて(研究代表者による「書評」)、両文書の機能的な差異が13世紀後半以降に統合されていくことを確認した。その成果は、同志社法学誌上に掲載された。他方で、裁判所がそれらの文書に応答しなかった当事者に対して敗訴の判決を下す際に用いた「召文違背之咎」なる裁判規範は、原則として、一方当事者が裁判所に対してその規範の適用を申請することにより初めて考慮されるべきものであったとの推測をうるにいたった。つまり、一方当事者が問状・召文に対して応答する際に作成する請文・陳状を受け取るとともに、「召文違背」の実態を確認する役目をおっていたところの、裁判所派遣の使者による報告を基に、他方当事者は「召文違背之咎」の適用を申請することの可否を判断していたことなどを推測した。 これについて研究代表者は、当事の裁判手続が、あくまで当事者主義的構造の中で展開されていたことの一つの証左であるとの認識をえるにいたった。
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