2008 Fiscal Year Annual Research Report
《闘う共和国》の思想と構造--憲法における共和主義の現代的可能性
Project/Area Number |
19530018
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山元 一 Keio University, 法科大学院, 教授 (10222382)
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Keywords | 憲法理論 / 共和主義 / 自由 / 人権 / 私人間効力 |
Research Abstract |
本年度は,前年度までの研究成果を踏まえて,日本における共和主義的国家像の可能性と問題点を検討した。現在の日本では,フランスやアメリカとの一定の共通性を孕みながら,国民共同体における<公共精神の衰退と社会的規範意識の弱化>についての強い危機感を背景に,主に改憲論議を通じて,憲法をもっぱら権利保障規範として捉えることに対する批判や,憲法改正による国民の義務づけ条項の拡大強化などの主張の影響力が増大している。また,戦後日本にはじめて受容された人権観念においても,人権の対国家防御的性格が必ずしも一般的理解とはならず,社会意識の上では人権の対私人的性格の強調が一般的な理解となっている。こういった状況の下で,従来の日本憲法学では一般的に,古典的な自由主義的憲法理解を前提にしつつ,憲法の権力制限規範性を強調し,国民共同体についての<血縁的自然的エトノス>と<人工的構成的デモス>という二つのイメージの二元的対立に還元することによって最近の日本の憲法論の警鐘に鳴らす議論が目に付くが,このような見地は保守派の憲法論に対する政治的批判に基づいた応接であることが否定できず,より豊かであっていいはずの憲法像をめぐる論議を貧弱なものにしてしまっていることを明らかにした。とりわけ,文献調査のための海外出張の成果も踏まえつつ,フランスやアメリカにおける共和主義的憲法思想に示唆を得ながら,有徳な市民の能動的な政治参加や社会参画を市民的公共精神の発現として位置づける考え方を,どのようにすれば日本憲法学に組み入れることができるについて,憲法理論における自由観念の構造転換の問題を中心に検討を進めた。
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Research Products
(1 results)