2009 Fiscal Year Annual Research Report
労働法におけるフレセキュリティー(柔軟性と安定性の相乗的実現化)の研究
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19530049
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
米津 孝司 Chuo University, 法務研究科, 教授 (30275002)
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Keywords | 合意の実質化 / 原理間衡量とその最適均衡 / 21世紀の労働法 / プロセス / グローバル化 / 法的効力のグラデーション / 労働契約法 / 団結権の再構成 |
Research Abstract |
本年度は3年間の研究のまとめとして、労働法におけるフレクシキュリティーに関する一般的な理論仮説の構築と、それを基礎として、労働法の解釈論および立法論の検討を行った。一般的な理論仮説の中身は以下の6点に要約することができる。 1 グローバル化と情報化を基底とする21世紀における世界及び日本の社会経済・労働世界の変化に労働法が対応するためには、労働者保護法と団結権保障とからなる19世紀・20世紀型の労働法の基本構造に一定の修正的変化が生じる。 2 その場合の基本理念は基本権に基礎づけられた「合意の実質化」であり、労働法は、デフォルトルールを含むグラデーション構造をなす規範体系をとして、労働世界の複雑な諸利益を最適均衡させるフレクシキュリティー機能をもつことになる。 3 21世紀労働法の中核をなす基本原理として措定される合意原則は、19世紀・20世紀の契約法原理とは異なり、「合意」をめぐる社会的・歴史的文脈(空間的・時間的文脈)を踏まえた解釈学的な解明に開かれたものであり、19世紀・20世紀契約法パラダイムにおいては対立的・二元的に把握されてきた意思原理と信頼原理を統合する重層構造性を内在する規範原理となる。 4 「合意の実質化」には、実体法規範とならんで、合意形成のプロセス保障も不可欠であり、手続法・紛争解決手続との有機的な連関を組み込んだ法システムとして構想されることになる。 5 「合意の実質化」は、従属労働に関する法としての労働法において、使用者の指揮命令権の行使における権力的契機と経済的従属性を最大限にミニマイズする指向性を意味し、集団的労働法の規範体系もまた、この法理念を基礎として再編成されることになる。 6 「合意の実質化」は、利害の対立する労使が生活空間・時間をともにする「企業」を基盤に実現させるほかなく、それは多様化する従業員・労働者個人の職業ニーズ・生活ニーズへの対応を通じて獲得される企業ミッション・企業文化の共有と相関する。
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Research Products
(3 results)