2008 Fiscal Year Annual Research Report
児童虐待における家族支援法システムの再構築ージェンダーに敏感な視点から
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19530092
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
若尾 典子 Bukkyo University, 社会福祉学部, 教授 (70301439)
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Keywords | 児童虐待 / ドメスティック・バイオレンス / ジェンダー / 親密な暴力 / 家族の暴力 |
Research Abstract |
オーストリア・ウィーンでの聞き取り調査と、アメリカの研究動向の検討を行った。ウィーンでは、児童虐待防止法の現状を調査した。とくに児童相談所に通告義務を課すことが検討されている現状について、二名の研究者(法・刑事社会学研究所のピルグラム氏とペリカン氏)から説明を受けた。児童虐待の緊急性を考慮して、児童相談所に警察への通告義務を課そうとする法改正にたいし、児童相談所や研究者からは、逆に相談者との信頼関係が形成されず、かつ警察の関与が解決にはならないことが問題として指摘された。児童虐待における相談は、専門家の判断に委ねることで充分なのか、あるいは通告義務を課すことで、警察との連携を強化することが望ましいのか。児童虐待における家族支援をめぐる法制度のありかたは、オーストリアでも困難な問題である。いま一つは、児童虐待(Child Abuse:以下、CAと言う)とドメスティック・バイオレンス(Domestic Violence:以下、DVという)との関係を問う研究の検討である。CAとDVは、ともに家族・親密な関係における暴力であるが、それぞれ異なる法制度の下にある。その結果、児童・家族保護か女性支援かで対立する傾向にあり、本研究の出発となる疑問でもある。この領域での研究が進展しているアメリカの文献を検討した結果、アメリカでも同様の問題意識から、Family ViolenceあるいはIntimate Violenceという概念が、とくにDVの領域で提起されていることが明らかになった。DV問題は、1990年代、女性被害者の救済と男性加害者への刑事罰が最重要課題とされていた。しかし2000年に入ると、女性の加害も問題視されるようになり、また男性暴力への教育指導のありかたにも疑問が生じた。その結果、ジェンダー概念をより実態に合わせる方向で「ジェンダーを包摂する家族支援」の再構築(John Hamel & Tonia L. Nicholls," Family Interventions in Domestic Violence, 2007, New York)が検討されている。
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Research Products
(1 results)