2008 Fiscal Year Annual Research Report
アジアのサイエンス型産業クラスターに関する理論・実証研究
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19530260
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岡本 由美子 Doshisha University, 政策学部, 教授 (00273805)
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Keywords | バイオテクノロジー / クラスター政策 / イノベーション / ベンチャー企業 |
Research Abstract |
今年度は特に、何故、日本のバイオクラスター政策は失敗に終わったのか、及び、シンガポールのバイオクラスター政策の理論的根拠の整理、及び、その政策評価を行った。以下、具体的な研究成果とその重要性・意義をまとめる。 1. 日本のバイオベンチャーは、大学発ベンチャーとともに、大企業の企業内ベンチャーからスタートした企業も多い。後者のような大企業から派生した新しい企業の場合、大学等との地理的近接性は全く立地決定要因として重要性が見出せなかった。前者の場合でも、ある1つの大学のみならず、外国を含めて多くの大学等と連携をとっている。自前主義が依然強い一方、技術開発のシーズとなる基礎・応用研究については海外を含めて幅広くネットワークを形成しているため、狭い地理的空間内のある特定の大学を中心としたクラスター形成政策はバイオ産業発展のためには逆効果となることが明らかとなった。これまでの政府の地域クラスター計画に抜本的な見直しを迫る、重要な結果であると考えられる。 2. シンガポール政府もまた、21世紀に入り、バイオ産業を将来の重要な産業の1つに位置付け、バイオクラスター政策を大規模に実施していった。確かに、同分野におけるシンガポールの世界的プレゼンスは急速に高まっているが、日本を除く他の主なアジア諸国と比較すると、研究成果を付加価値創出に結びつける企業やその周辺産業の発展が遅れていることもわかった。シンガポールにおいては、科学・技術と企業・産業育成のバランスのとれた政策が必要であることが明らかとなった。これは、途上国の今後の産業政策を考えるにあたって重要な示唆を与えていると考えられる。
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