2009 Fiscal Year Annual Research Report
高度技術システムの安全確保のためのテクノロジーマネジメントの研究
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19530333
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
原 拓志 Kobe University, 経営学研究科, 教授 (60252756)
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Keywords | 安全 / 技術システム / 事故 / 技術の社会的形成 / MOT / 組織プロセス / 航空安全 / 鉄道安全 |
Research Abstract |
本年度は、鉄道事故に関する追加的なフィールドワークを行ったほかは、主に、前年度、前々年度に集めたデータの分析を実施して、その結果を論文やディスカッションペーパー(DP)にまとめ、海外の学会(アジア太平洋科学技術社会論学会大会:ブリスベン・2009年11月25日)で報告をするなど、研究成果のまとめと発表を行った。DPおよび学会報告のペーパーにおいては、新幹線およびミニ新幹線の事例をもとに、物的・人的・制度的な諸要素のすべての組み合わせによる安全対策の必要性と効果について明らかにしたうえで、そうして達成された安全効果の便益が、市場競争の圧力の下で、さらなる効率やスピードの追求に当てられてしまうという構造的な問題について明らかにした。また、理論的な論文においては、安全形成のための技術システムと組織との関係について、ペローをはじめとする本質主義的なアプローチと、ワイクをはじめとする構築主義的なアプローチのそれぞれの特徴および長所短所を見極めたうえで、安全形成のための理論的立場としては、安全が技術の特性によって決定されるのではなく、技術や組織成員、制度など諸要素の相互作用によって形成されるのだとする構築主義的なアプローチに基盤を置きつつも、実際の、物や制度、あるいは人々の認識における「慣性」ともいえる安定性に着目し、そのために本質主義的なアプローチの提供する技術システムの特性と安全に関する類型化された見方には、一定の現実性があって、かつその意味での実践的有用性があることから、それを全否定するのではなく、限定を付しつつも取り入れるべきとの見解を示した。なお、この内容について、2010年度において、経営学会国際連合(IFSAM)大会での報告がアクセプトされた。鉄道と航空の事例研究も科学技術社会論の国際学会(4S)に投稿中である。
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