2009 Fiscal Year Annual Research Report
知識労働者のキャリアの多様化と人的資源管理 -フィールドワークによる分析-
Project/Area Number |
19530370
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
三輪 卓己 Kyoto Sangyo University, 経営学部, 准教授 (10440869)
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Keywords | キャリア志向 / 学習 / 組織間移動 / 企業内特殊知識 / 仕事の複雑・不確実性 / 長期のキャリアパス / インセンティブ |
Research Abstract |
前年度までのキャリアの分析結果を踏まえて、知識労働者の人的資源管理における重点的要素と、その多様性の探索を行った。知識労働者を雇用する企業の人事部のマネジャーにインタビューを行い、その企業の人的資源管理の特徴とその狙いを調査した。全部で10社からの協力が得られている。そこから、知識労働者のキャリア発達を促すための人的資源管理を考察した。 インタビュー調査を通じて、組織規模が大きく、仕事の複雑・不確実性、企業内特殊知識の重要性が高い企業では、長期にわたるキャリア・パスが整備されており、また昇進・昇格に厳しい基準を設けて、上位の職位に登用されることの意義を大きなものにしていることがわかった。さらに上位の職位に就くことによって大きな自律性が与えられるインセンティブを設けている例もみられた。それらの企業では、高度な専門職志向や管理職志向が必要となるため、長期雇用と能力開発を重視した人的資源管理が行われているものと思われる。一方、やや規模が小さく、複雑・不確実性などが低い企業では、シンプルな評価方式によって短期的に報酬が決められる傾向があった。それらの企業では従業員の転職も多いため、それに対応する人的資源管理が行われているのである。 ただし、小規模で仕事の複雑・不確実性が低い企業においても、長期雇用を目指している企業もみられた。労働市場での競争力がそれほど強くないために、流動的な雇用では人的資源の確保が危うくなるためである。これらの点については今後さらに検討が必要であろう。その他にも、知識労働者の人的資源管理についてはまだまだ詳細に分析すべき事柄が残されている。より多くの企業を対象としたサーベイ・リサーチなどを今後の課題として考えている。
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