2009 Fiscal Year Annual Research Report
国際結婚と「東アジア共同体」:日本人-タイ人の結婚を中心として
Project/Area Number |
19530439
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤井 勝 Kobe University, 人文学研究科, 教授 (20165343)
|
Keywords | 国際結婚 / 東アジア / エスニシティ / 地域社会 / 社会開発 / グローバル化 / 南北格差 / 中間層 |
Research Abstract |
最終年度であるので、日本人-タイ人の結婚を東アジアの国際結婚の一環として位置づける研究を実施した。 1)本研究での実証的な調査研究を踏まえて、グローバル時代における東アジアの国際結婚の分析枠組みを構成した。つまり経済発展の「遅れた国」から「進んだ国」へという女性の移動を中心に展開する「南北間型国際結婚」と、多様な人の移動と交流(ビジネス、留学、ツーリズムなど)を契機とする中間層主体の「文化交流型国際結婚」を基本的なタイプとして設定するとともに、家族社会学的視点による夫方・妻方の婚姻形態、および地域社会学的視点からの都市・農村(地方)の定住形態を考慮したものであり、国際結婚論の発展という点から意義深い。 2)バンコクにおいて日本人-タイ人の結婚の調査表調査を実施し、その固有の特質を明らかにしたことは日タイ国際結婚研究にとって意義深い。この国際結婚は主に「文化交流型国際結婚」に属し、しかも婚姻後の居住形態が妻の出身国(大都市)であるという特徴をもつ。そしてこの結婚のなかに家族や子供に関する独自の価値や文化の志向の存在を確認できたことは重要である。 3)平成21年12月に国際ワークショップ『東アジアの国際結婚』を実施し、本研究で行ってきた日本人-タイ人の国際結婚等の調査を踏まえつつ、東アジアの国際結婚の全体像や課題を明らかにした。この会議では、招聘した研究者によって韓国や台湾における国際結婚の展開や現状も詳しく取り上げられることにより、東アジアの国際結婚の多様かつ広範な展開が明らかになっただけはなく、各国における国際結婚の制度的社会的な対応の特徴が示されるなどしたため、東アジア全体が国際結婚と向きあうべき方向を考える上で示唆的であった。こうしたテーマや陣容による学術会議は少ないので、その成果は極めて重要性が高い。
|