2009 Fiscal Year Annual Research Report
犯罪不安に関する認知・感情プロセスのモデル化とその応用
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19530553
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上市 秀雄 University of Tsukuba, 大学院・システム情報工学研究科, 講師 (20334534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺井 あすか 東京工業大学, グローバルエッジ研究院, テニュア・トラック助教 (70422540)
栗山 直子 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 助教 (90361782)
楠見 孝 京都大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (70195444)
織田 弥生 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 特別研究員 (40456265)
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Keywords | 適応的行動 / 感情 / 後悔対処 / 個人差 / ストレス対処 |
Research Abstract |
人は普段の生活の中で過ちを犯したりした場合、罪悪感や後悔、恥を感じる。たとえば法律や約束などを破った場合、それらネガティブな感情が生じる。それらネガティブな感情は、適応的行動を促進する機能もある。たとえば自分の過ちから何かを感じる人は、自分の行動を反省し改善するだろう。逆に何も学ばなければ、再び同じ過ちを繰り返すだけではなく、徐々にその誤った行動が促進され、非社会的行動を形成させてしまうかもしれない。本研究では、日常的な過ちや失敗が生じる状況を、一般的状況or対人的状況と、Action状況or Inaction状況の2つの次元により分類したうえで、どのような要因が適応的行動を促進するのかについて検討した。 大学生と大学院生140名(男性64名、女性74名、不明2名)に対して、2009年11月に質問紙を配布回収した。質問項目に関しては、各状況において、最初に架空の失敗状況の説明文を読ませた上で、自分がその過ちを犯した場合に感じる感情(罪悪感・後悔・恥)、内的要因(気がかり、問題に対する制御可能性、内的帰属、外的帰属)、心理的対処(反省、合理化、自己正当化)、行動的対処(謝罪、行動変更、気分転換、無行動)などについて回答させた。 その結果、4状況全てに共通して、罪悪感・後悔・恥は、気がかりを介して、適応的行動(謝罪・行動変更)に影響していた。これは自分の過ちを気にする人ほど反省し、自分の行動をよりよい方向へ変えるという適応的行動をとることを意味している。また状況ごとに以下のような傾向も見られた。一般的状況に共通して、問題に対する制御可能性もまた適応的行動を促進する要因であった。Action状況においては、内的帰属が適応的行動を促進していた。 これらのことから、自分の過ちから学習して、自分の行動をよりよい方向へ変えるためには、自分自身の行った行動に対してよい意味で気にすること、つまり「気がかり」が重要であることがわかった。この気がかりを持つことにより、反省や行動変更という行動が促される可能性があといえる。
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