2009 Fiscal Year Annual Research Report
スティグマ化されたリスクの知覚:感情と公正のヒューリスティックモデル
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19530570
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
竹西 亜古 Hyogo University of Teacher Education, 学校教育研究科, 教授 (20289010)
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Keywords | リスク知覚 / ヒューリスティック / 感情 / 心理的公正 / 手続き的公正 |
Research Abstract |
平成21年度は当初研究計画にのっとり、スティグマ化されたリスク対象に対する一般市民の心理過程を検討するため、Web調査によるデータ収集および基礎的分析を行った。調査では回答者の偏りを避けるため、大規模なモニタープールから年齢、性別、居住地の属性において国勢調査をベースにした比例抽出を実行し対象者を決定した。スティグマ化されたリスク対象として原子力発電(原発)と遺伝子組換作物(GMF)を用い、仮説となるヒューリスティックモデルに含まれる変数を調査項目として設定した。具体的な調査項目は、過去の事件事故に関する記憶、感情と公正さのイメージ、リスクの性質や対処に関する基本的知識、リスク管理者の手続き的公正評価、科学に対する価値観などである。また、調査ではスティグマ化されたリスクの位置づけを再確認するため、Slovic(1974)の手法を用いて、原発とGMFを含む複数の対象に対するリスク知覚を測定した。原発、GMFともに600件の回答を得て分析を行った結果、以下のことが明らかになった。1)原発に関しては、近年の安全管理やリスクコミュニケーションの向上効果のためか、過去に起きた事件事故の記憶がやや薄らぐ傾向がみられる。しかしながら、原発、放射能、核廃棄物処分場などに対するリスク知覚は高く、否定的感情や負の想起(放射能汚染、兵器)が依然強い。2)一方、一般市民の食品事件事故の記憶は鮮明であり、事故米事件、乳製品食中毒事件、中国産食品中毒事件など、多くの市民が身近な出来事として記憶している。また、市民のGMFに対するイメージは、原発より否定的である傾向がみられ、特に「正しくない」「不自然だ」といった公正さの否定イメージが強くみられた。3)さらに、原発、GMFのいずれにおいても、リスクの性質や対処に関する基本的知識の不足、リスク管理者の手続き的公正に対する不信感が市民に根強いことが示された。
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