Research Abstract |
本研究は,フランス革命期に革命戦争によりフランス領となった「併合地」に対し,「公教育組織法(通称ドヌー法,1795年)に基づいて施行された公教育の実態を,未刊行史料に基づいて解明し,思想面の研究に重点が置かれがちであっていた革命期の公教育について「併合地」の問題も視野に入れて,理念と実態の両面から,革命期公教育の全容を明らかにしようとするものである.本研究においては,刊行史料の存在しない総裁政府期の「併合地」の公教育組織作業を解明にあたり,未刊行行史料の収集・分析が重要であるため,平成19年度は,フランス国立古文書館所蔵「内務省手稿史料」の中に残されている「併合地」の公教育関係史料の全容調査に着手し,「併合地」での公教育が公教育組織法に基づいてどのように実施されたのか,「併合地」ごとに実施状況の相違はみられるかといった点に注意しつつ,史料の収集・分析を行った.その過程で,「併合地」の公教育実施状況には,フランス型公教育制度を積極的に取り入れ施行した「併合地」と,革命政府が積極的に介入する形で公教育が施行された「併合地」といった差異が存在したことが明らかとなった.この問題の分析を深めるため,当該地域の文書館に赴き新史料の発掘に努めるとともに,当該地域に既に存在した公教育制度(大学,コレージュなど)が「併合地」時代にどのように継承・廃絶されたのかについても検討する必要性が痛感されたため,本年度は,革命期「併合地」時代に複数の県が設けられていたスイス西部地域(現在のフランス語圏だけでなくドイツ語圏も含む)の国立古文書館(ジュネーヴ)で調査を行い,「併合」前の教育状況,「併合」後の公教育の状況についての史料を収集し,公教育組織法に基づく「併合地」内での公教育の実施状況が当該地域にすでに存在した公教育制度(大学,コレージュなど)の発展度合いとどのように関わっていたかという点を中心に分析をすすめた.
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