2008 Fiscal Year Annual Research Report
フランス社会教育施設の公・私セクターの関連構造-公共圏の創造の視角から-
Project/Area Number |
19530736
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Research Institution | Shigakukan University |
Principal Investigator |
岩橋 恵子 Shigakukan University, 法学部, 教授 (70248649)
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Keywords | フランス / 社会教育施設 / アソシアシオン / 社会・社会文化センター / ガバナンス / 管理運営 / アニマトゥール / 市町村化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、フランス社会教育施設の管理運営における公・私セクターの関連構造を解明することによって、公共性の多元的な担い手による公共圏の創造のための社会教育施設のあり方を探ることにある。平成20年度は、前年度研究での社会教育施設の管理運営形態の類型化を踏まえ、典型的な社会教育施設事例として社会・社会文化センター(les centres sociaux et socioculturels以下CS)および特徴的な地域事例としてイッシレムリノ市(以下VIM)の社会教育施設に焦点をあてて調査・考察を行い、以下の点を明らかにした。 CSは全国に1,776施設あるが、その管理運営は(1)アソシアシオンによるもの(全体の71%)(2)市町村によるもの(13%)(3)家族手当金庫(CAF)によるもの(16%)がある。管理運営形態によって評価の違いや財源の多少はなく、管理主体は各々の地域の実情(住民やアソシアシオンの参加、市町村の政策や市議の立場、プロジェクト内容等)によって決定される。そのことは、地域の状況によって絶えず管理主体が変わりうることを意味している。こうした管理運営形態の不安定さは施設活動における不安材料であるが、重要なのは管理主体に左右されない住民のアソシアシオンがCSにおいてガバナンス能力を形成・発揮できることこそが求められるのであり、管理運営形態のあり方にあるのではないということである。他方VIMでは、1982年以来CLAVIMというアソシアシオンが地域の52の社会教育施設を管理運営しており、安定した体制を整えている。その背景にはVIMが市民参加型の行政を強く打ち出し、アソシアシオンが継続的に活動ができるような全面的なバックアップ(施設無償貸与、市職員の派遣、財政80%保障など)を行ってきたことがある。だが、VIMの政策変更があればCLAVIMが安定している保障はないのであり、その意味でCSと同様、CLAVIMが住民のアソシアシオンとしてガバナンス能力の向上を絶えず図ることが求められている。 以上の考察から、多様な管理運営形態にみられるフランス社会教育施設の公・私セクター間の複雑な構造は、財政や職員の位置に関わるものであり、活動プロジェクトと実践においての鍵を握るのは住民のアソシアシオンの統治=自治に多くを負っているといえる。
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Research Products
(4 results)