2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540026
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡部 隆夫 Osaka University, 理学研究科, 教授 (30201198)
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Keywords | 代数体 / アラケロフ類群 / アラケロフ因子 |
Research Abstract |
1970年代はじめにShanksは,実2次体の主イデアル類が1次元トーラス的な構造をもつことを見出し,それを"infrastructure"と呼んだ.最近の論文で,Schoofは,代数体のアラケロフ類群を用いることによって,"infrastructure"のきれいな定式化を任意の代数体で与えている.Schoofの論文では,2次体のイデアルが整数係数2元2次形式の簡約形式に対応するときに満たす条件を高次の体に拡張することにより,被約アラケロフ因子という用語が導入される.その定義から被約アラケロフ因子の個数は高々有限個しかないことが示されるが,本年度の研究ではその個数の上下からの評価を与えた(吉満隆亮氏との共同研究).具体的には,n次の代数体Fに対し,その被約アラケロフ因子の個数をr,類数をh,単数規準をRとするとき,A・g!≦r/hR≦B・πの形の不等式を証明した.ここでA,BはFから決まる具体的に計算可能な定数で,gはFの単数ランクである,Fが2次体の場合,rはFの判別式と同じ判別式を持つ整数係数2元2次簡約形式の個数と一致する.この場合に,知られているrの値を使って,示された不等式の評価の精度を確かめたところ,下からの評価は良い近似値を与えるが,上からの評価はそれほど良くないということも確認した.一般の高次の代数体に対し,rの値を具体的に計算する方法は今のところ知られていないようである.被約アラケロフ因子はSchoofの理論において中心的な役割を果たすが,その個数についておおよその検討をつけることができるという点に今回の結果の意義がある.
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