Research Abstract |
可積分系の研究は,大別すれば「古典可積分系」,「量子可積分系」の2つに分類できる。量子可積分系は,対応する古典系を正準量子化したものであるので,両者はこの意味では初めから関係付けられている。しかし,両者にはそれ以上の結びつきがあることを,これまでの研究は示唆している。本年度は,特に次の2つの例に注目して研究を行なった。 [例1]量子可積分系の相関関数が,古典可積分系(特にパンルヴェ方程式)の特殊解を与えること。 [例2]古典可積分系の超離散化から,組合せ論的R行列が得られること。 例1に関連して,研究代表者の筧らによって導入された(2+1)次元NLS階層の相似簡約を考えることで,パンルヴェII型〜VI型方程式を統一的に扱える手法を構築した。このことから,直交多項式アンサンブルの相関関数がパンルヴェ方程式と関係するというTracy-Widomによる結果に,見通しのよい別証明が与えられる。この結果を拡張していくことで,より広いクラスの相関関数を,古典ソリトン理論を用いて取り扱うことが可能になると期待される。 例2に関しては,初年度である本年度は,これまでに得られている様々な結果を統一的に,かつ,より簡明に捕えることを目標に,離散KP階層の差分作用素による定式化を提案し,それに基づいてYang-Baxter写像との関連を議論した。また,量子群の結晶基底における「柏原作用素」の対応物を,離散KP階層の変換としてとらえることに成功した。 上記以外の成果として,超幾何関数に関連した以下の結果を得た。 ・超幾何関数が満たす関数等式から,保存量を持つ非線形差分方程式を得る手法を開発した。 ・推移確率がq-超幾何関数で表される確率過程を構成した。
|