2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19540340
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 聡 Nara Institute of Science and Technology, 物質創成科学研究科, 准教授 (80212009)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相原 正樹 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (70091163)
|
Keywords | 電荷秩序状態 / 光誘起相転移 / CDW-SDW量子相転移 / 光吸収スペクトル / 低次元強相関電子系 |
Research Abstract |
光励起後のダイナミックスを理解するためには、光励起状態の性質を解明することが重要となる。そこで、今年度はふたつの系において、光物性を支配する重要な光励起状態の物理的性質を調べた。1次元鎖および2次元正方格子における強相関half-filled系での代表的電荷秩序状態のひとつである電荷密度波(CDW)状態とスピン密度波(SDW)状態との量子相境界をまたいで、光励起状態の性質がどのように変化するかを調べた。1次元系においては、相境界付近のSDW(CDW)基底領域において、ホロン・ダブロン対(スピン1重項対)ストリング状態が量子揺らぎとして重要な役割を果たし、これらのストリング状態が重なり合ったCDW(スピン1重項対)ドロプレット状態が光吸収スペクトルを支配する。これらのドロプレット状態は、相境界をまたいでCDW領域と中性領域の割合が連続的に変化し、光励起状態には相転移が起きないことがわかった。2次元系においては、相境界付近でも、CDWもしくはスピン1重項対クラスター状態は、クラスターの界面エネルギーのため揺らぎとして重要な役割を果たさず、光吸収スペクトルを支配する光励起状態は相境界で不連続に変化することがわかった。光誘起相転移が観測されているα-(BEDT-TTF)2Xにおける電荷秩序状態には多様な光励起状態が存在することを明らかにした。特に、低エネルギー領域での巨大なピークのいくつかは、高温で実現される金属状態と類似した電子構造を持つ光励起状態への励起によるものであり、従来考えられてきた単純な電子遷移によるものとは異なる集団励起によるものであることなどがわかった。これらの光励起状態を励起した後のダイナミックスは、光励起状態の特異な性質を反映したものとなる。今年度で得られた知見により、このような視点からダイナミックスの研究を進めることが可能となった。
|