2009 Fiscal Year Annual Research Report
p-f混成効果に基づくf電子系の動的Jahn-Teller効果
Project/Area Number |
19540355
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩佐 和晃 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 准教授 (00275009)
|
Keywords | 電子-格子相互作用 / p-f混成 / フォノン / 中性子散乱 / X線散乱 |
Research Abstract |
希土類化合物の物性を担うf電子軌道は強く結晶格子と結合し、たとえば近年注目されている電子多極子秩序と結晶構造変調が同時に起きる相転移が生じうる。局在性による軌道自由度をもつf電子と格子間の相互作用が重要となっている。そうした物性を示す化合物のうち、f電子をもつ希土類イオンとそれに隣接するボロンやプニクトゲンイオンのp電子との相関による構造的特徴を明らかにすることを目指し、H21年度において以下の成果を得た。 これまでに調べてきた充填スクッテルダイトの低エネルギーフォノンに加えて、金属-非金属転移を示す充填スクッテルダイトPr(Ru_<1-x>Rh_x)_4P_<12>(x=0.01,0.03,0.05)単結晶試料の構造的研究を進めた。この物質では、Pr 4f電子の高次多極子の反強的秩序と結晶構造変調が見出されていたが、Rh濃度の増加に伴いその構造変調が低温では緩和されることが分かった。特に、KEK PFでの放射光X線散乱により、結晶構造変調と4f電子多極子の異方的な軌道電荷分布を示す散乱シグナルが同じ温度依存性を示すことを確認し、点群対称性を保持した多極子の秩序における特徴を見出した。中性子散乱による4f電子結晶場分裂とX線回折による構造変調の詳細を、2009年7月の磁性国際会議ICM2009(ドイツ・カールスルーエ)にて発表し、プロシーディングス論文として公開した。なお、前年度に実験結果を得ていた、PrOs_4P_<12>における結晶場準位のエネルギー位置と幅の温度依存性からp-f混成効果を議論した成果を学術論文としたのに加え、ICM2009にて口頭発表に選ばれた。 また、磁気構造と結晶構造の同時相転移を示すGdB_6におけるフォノンの低温に向かってのソフト化を放射光X線非弾性散乱実験で見出し、相転移に関わる構造の前駆現象を明らかにした。この成果について、4月に開かれる国際会議PHONON2010(台湾)での口頭発表に選ばれた。
|