2008 Fiscal Year Annual Research Report
フラストレーション系の強磁場ESRによるスピンJahn-Teller効果の解明
Project/Area Number |
19540367
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大久保 晋 Kobe University, 自然科学研究系先端融合研究環分子フォトサイエンス研究センター, 助教 (80283901)
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Keywords | スピンフラストレーション / パイロクロア格子 / 強磁場ESR |
Research Abstract |
パイロクロア格子を持つCrスピネル化合物においてスピンJahn-Teller効果の可能性が指摘されている。これを明らかにする目的で、格子によるフラストレーション効果を調べた。格子として取り上げたのは、パイロクロア格子となるクリノアタカマイトと呼ばれるフラストレーション系物質Cu_4(OH)_6Cl_2とカゴメ格子反強磁性体であるハーバートスミサイトと呼ばれる物質ZnCu_3(OH)_6Cl_2である。さらに、これらの間の次元性を調べるために、混晶系であるZn_<1-x>Cu_<3+x>(OH)_6Cl_2のESR測定を行った。カゴメ格子反強磁性体ではESRの吸収線幅は全く温度依存性を示しておらずスピン相関がほとんど発達しないことが明らかになった。このことは、T. Nakamuraらによる量子モンテカルロ計算を支持するもので、ZnCu_3(OH)_6Cl_2では0.009Jの温度までスピン相関が発達していないことを意味している。一方、パイロクロア格子反強磁性体では、低温で反強磁性転移をおこし長距離秩序するが、カゴメ-パイロクロア格子の中間物質では、スピングラスのESRに似たようなスピン凍結によるものと思われるモードが観測された。パイロクロア格子側に近づくにつれ反強磁性によるモードが現れるが、スピン凍結によるモードは共存することが明らかになった。これはZhangらがμSRの測定で提案しているスピン凍結成分と反強磁性成分の共存に対応しているものと考えられる。以上の測定から、スピンフラストレーションによる影響はスピン凍結となって現れ、それは次元性に対してロバストであることを示している。Crスピネル化合物においても格子の堅さはほぼ同じオーダーであると考えると、パイロクロア格子であってもフラストレーションの効果は強く効いており、スピン-格子相互作用によってフラストレーションを解消するために格子を歪ませる効果が現れることが考えられる。
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Research Products
(20 results)